濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
過去と未来を繋げたUFC日本大会。
新伝説も生まれた2・26をレポート!
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2012/02/27 11:55
挑戦者ベンソン・ヘンダーソンのハイキックが王者フランク・エドガーの顔面に炸裂する。華麗なフットワークで戦う王者に対し、体格とパワーで押す挑戦者。観る者に息もつかせぬ激しい攻防は、試合の最後まで続いた
「あんたたち、今までどこにいたんだ!?」
ぎっしり埋まった客席を見て、ある記者が思わずつぶやいた。2月26日、さいたまスーパーアリーナで開催された『UFC144』日本大会。約2万人のファンが生み出した熱気は、K-1・PRIDE時代の格闘技ブーム全盛期を思わせるものだった。
成功の要因はいくつか考えられる。K-1が活動休止、唯一の“国内メジャー”であるDREAMも活動規模を縮小させている中で、ファンは掛け値なしのビッグイベントを渇望していたのではないか。あるいは、五味隆典や山本“KID”徳郁といった日本人選手が数多く出場したことが功を奏したのかもしれない。
実際、彼らには圧倒的な声援が送られていた。連敗中だった五味が光岡映二との日本人対決を制すと会場のテンションは一気に爆発。また、セミファイナルでクイントン“ランペイジ”ジャクソンが『PRIDEのテーマ』で入場してきた時の歓声も凄まじいものだった。
言うまでもなく、ランペイジはPRIDEで出世街道を歩み始めた選手だ。
当初は別の大会への出場が予定されていたのだが、彼自身が主催者に日本大会へのスライドを訴えたのだという。まして、さいたまスーパーアリーナは、PRIDEがメイン会場として使用していた場所。日本人ファイターだけでなく、ランペイジもまた“故郷”に戻ってきたのだと言っていい。
かつて熱狂したPRIDE、その人気を支えた選手たちとUFCで再会。
ファンの多くは、明らかに試合を通して過去と交信していた。
かつて自分が熱狂したPRIDE、その人気を支えた選手たちとUFCで再会する。会場の熱気は、いわば興奮と感傷がミックスしてできたものだったのではないか。UFC日本大会は、過去と現在を見事につなげてみせたのである。
とはいえ、ノスタルジーだけで大会が成功するはずはない。UFCはあくまで現在進行形の“世界最大・最高峰”。今大会も、日本だけのローカルバージョンではなく、アメリカをはじめとした世界のファンに向けて開催されたものだ。