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ライアンに会えばダルビッシュも即決!?
メジャーに見る様々なオーナー模様。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2012/01/08 08:01

ライアンに会えばダルビッシュも即決!?メジャーに見る様々なオーナー模様。<Number Web> photograph by Getty Images

2011年12月10日、アルバート・プーホルス、C・J・ウィルソン両選手の入団記者会見でスピーチをしたアート・モレノ=エンゼルスオーナー、65歳。2003年、MLBの歴史上はじめて、ヒスパニック系アメリカ人として球団オーナーとなった

“owner”【名詞】
1 持ち主、所有者、オーナー〔of〕
2 《英俗》船長
─研究社新英和中辞典第6版─

 今さら辞書を検索するまでもなかったが、“owner”という英単語の意味を理解していない日本人はいないだろう。もちろんメジャーリーグにおいてもその意味は変わることはない。チームの所有者として絶大な力を有する人物である。そして時にはチームの“顔”として大きな影響力を及ぼすこともある。2011年はそんなことを改めて痛感させられた1年だった。

 昨年の12月10日、エンゼル・スタジアムの正面入り口には約4200人のファンが集結した。新たにロサンゼルス・エンゼルスに加わったアルバート・プーホルス、C・J・ウィルソン両選手の入団記者会見に立ち会うためだった。そして会見の冒頭にアート・モレノ=オーナーが挨拶に立とうとした瞬間、ファンの間から“Thank you, Arty!(Artyはオーナーのファースト・ネームを親しみを込めた呼び方)”を連呼する雄叫びが続き、モレノ氏が笑顔を浮かべたまま挨拶できずにいるほどだった。

MLB史上初のヒスパニック系の陽気なオーナー。

 元々モレノ氏はメジャー球界初のヒスパニック系のオーナーとして2003年に就任して以来、私財を投じて球場施設を改装し、またチケット価格を据え置きにするなど、常にファン目線の球団経営を続けており、球界きってのファンに愛されるオーナーだった。もちろんチーム強化のために資金提供を惜しまなかった。その甲斐あって2003年以降負け越しシーズンはわずか2回で、プレーオフにも5度進出する強豪チームの地位を築き上げた。そして今回、地元FOXテレビと大型放映権契約を結んだことで、プーホルス、ウィルソンという今オフFAの目玉、2選手を一気に獲得するという大型補強をやってのけた。

「昨日は妻とビーチを散歩したのですが、あちこちで『あんな大金を使って大丈夫なのか』と心配して声をかけてもらいました。お陰様で何杯もビールをご馳走になりました」

 いつものように物腰の柔らかい口調でジョークを飛ばしたモレノ氏は、会場にいたすべての人たちを笑いの渦に引き込んでしまった。改めて彼の魅力に触れた思いだった。

【次ページ】 プーホルスの移籍を成功させた、モレノ氏の魅力と人柄。

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