フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
母と一緒に滑った浅田が全日本でV。
男子は最強の世界選手権代表トリオ。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAkihiro Sugimoto/AFLO SPORT
posted2011/12/26 11:50
2年ぶり5度目の全日本選手権優勝に「母も喜んでくれていると思います」と語った浅田真央。SPで首位に立っていた村上佳菜子は、フリーでのジャンプミスや転倒があり浅田の逆転優勝を許すこととなった
「ずっと近くにいてくれているような気がしていた」
亡くなった浅田匡子さんは、ある時私にこう言ったことがある。
「フィギュアスケートは、勝った、負けたではないと思うんです。その人の生きざまをどう氷の上で見せるか。それがフィギュアスケートではないですか」
そして浅田真央は、この日なみはやドームの氷の上で、私たちに彼女の生きざまをしっかりと見せてくれた。悲しいとか、つらいということは、最後まで一切口にしなかった。
「いつもと違う状況の中で、今までやってきたことを出せればいいなと思って滑りました」
世界選手権代表が発表された後、会見の最後にこういう質問が出た。
「いろいろあった中で世界の代表に選ばれたことを、お母さんにどのように報告しますか?」
ほんの一瞬、関係者の間に緊張感が漂った。トリノ五輪で似たような質問をされた安藤美姫が泣き出してしまった一件が頭をよぎった。だがそれは、杞憂だった。
「ずっと近くにいてくれているような気がしていたので、何も報告しなくてもわかってくれていると思います」
浅田真央は、曇りのない笑顔でそう答えた。周りが思っているよりも、彼女はずっと強い。結果的に5度目のタイトルになったけれど、彼女にとってはこの場に出てきて本人らしい演技をすることだけで、大きな勝利だったのだと思う。
今シーズン最悪の出来ながら優勝を果たした高橋の覚悟。
男子は、高橋大輔が5度目の優勝を果たした。
SPでは数年ぶりに4+3のトウループコンビネーションを成功させて、96.05という高得点を獲得。演技終了後に、ガッツポーズを見せた。
だがフリーでは3度転倒という、今シーズン最悪の出来だった。それでもSPで10ポイント以上の点差をつけていた小塚崇彦をふりきり、トップを保った。
「SPでは自分でも思っていなかったほどの滑りができて、欲がでてしまった。優勝はできたけれど、演技には納得していません」
フリー後の会見で、高橋大輔はそう語った。
「今季はいろいろ新しいことにチャレンジしているので、3位以内を目指していたけれど優勝はできると思っていなかった。結果よりも内容にこだわって滑ろうと思った。最終的にはソチ五輪に行きたいし、行くのなら勝ちたい。そのために不十分なところをすべて見直していきます」