フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
浅田匡子さんに届けと渾身の滑り。
GPファイナルの日本勢、各々の想い。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2011/12/12 13:50
2位となった高橋大輔は、「(浅田選手は)お母さんを大好きだった。今後どういうふうに向き合っていくのかがすごく心配です」と語った
まったく予想していなかった形で、悲しいGPファイナルの開幕となった。
3年ぶりにファイナルに進出した浅田真央が、母親の危篤という知らせを受けて8日に急遽帰国。残された選手たちも衝撃を受け、関係者みんなが回復を祈っていたが、願いも空しく翌日9日、浅田舞、真央姉妹の母親である匡子(きょうこ)さんの訃報がもたらされた。スケート関係者の間では知らないもののない、凛とした気品のある女性だった。
大多数の選手にとって、母親とのきずなは普通以上に強いものだ。幼少時から母親が身を削るようにして、影のように付き添いながらスケート活動を支えている。突然の悲報はどの選手にとっても他人事ではなく、カロリナ・コストナーも知らせを聞いて涙を流したという。特に日本の選手にとっては、精神的に影響もあったことだろう。
鈴木明子は「自分にできることは精いっぱいの演技」と決心した。
そんな中で、日本の選手は精いっぱい戦った。
鈴木明子は、SP、フリーともに細かいミスはいくつかあったものの、大きく崩れることなく全体をまとめて2位に入賞した。SPでは初めて3フリップ+3トウループのコンビネーションに挑戦する予定をしていたが、フリップの着氷が不安定で実現できなかったことが、何より悔しかったという。
浅田が欠場したことに対する精神的な影響について聞かれると、「今の私にできることは、自分にとって精いっぱいの演技をすることと思った。いったん氷の上に出たら、気持ちを切り替えることができたと思います」と語った。
「氷の上に出て滑ることができることに感謝をしながら滑りました」という言葉の通り、フリーの歌劇「こうもり」では始終柔和な表情を崩さずに、滑る喜びを最後まで表現した。だが本人は、「順位的には、GPファイナルでは自己ベスト。でも演技の内容には満足していない。思ったような滑りができなかった」と自分に厳しい評価をくだした。ベテランの年齢域に達してから本格的に3+3の練習をはじめたという頑張り屋さんだけあり、自分に対する要求が高いのだろう。
優勝は、カロリナ・コストナーだった。GPファイナルは4度目の進出で、毎回メダルを手にしていたが優勝は今回が初めて。昨年左ひざを痛めて以来、いまだに3ルッツを試合で入れてないことについて聞かれると、「自分のプログラムは他の選手ほど内容のレベルが高くないと感じた。でも現実的にその時々で、できることを精いっぱいしなくてはならないから」と答えた。ミスを最小限に抑え、リンク全体を大きく使うスケーティングの質などで高い5コンポーネンツを得てSP、フリーともにトップを保った。