MLB東奔西走BACK NUMBER
49歳、現役最年長左腕としての矜持。
J・モイヤー、大手術から奇跡の復活。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2011/11/13 08:01
1986年にシカゴ・カブスでメジャーデビューしたジェイミー・モイヤー。183cm、84kgとメジャーでは決して大きくはない身体ながら第一線で投げ続け、ここまで通算267勝を挙げている
49歳にして、メジャーで投げることの意味と意義。
今回の手術はモイヤーの野球人生を賭けた一大決心だったはずだが、その判断はまさに正しかった。さらに結果的に1年間という充電期間を入れることになり、肉体的にも大々的なオーバーホールができたはずだ。早ければ年内中に契約先のチームが決まってもおかしくはないだろう。
来シーズンの現役復帰が間違いなさそうなモイヤーは、11月18日に49歳を迎える。もし来シーズンに公式戦登板を実現させた場合、49歳以上の公式戦登板は1972年に当時ドジャースだったホイト・ウィルヘルム以来の快挙となる。
ただ当時のウィルヘルムは明らかに晩年の選手で、登板数は16試合で投球回数は25.1イニングに留まる。それだけにモイヤーが先発5番手としてフルシーズン戦った場合、まったく数字の重みが違ってくるのだ。
ちなみにMLBの最高齢投手記録は別表の通り。すでにモイヤーより高齢の投手は2人しかいない。だが1位のサッチェル・ペイジの場合は、46歳だった1953年シーズンを最後にメジャーリーグでの登板はなく、マイナーリーグ等に在籍しながら1965年シーズン1試合だけ先発した(しかも3イニングのみ)だけだ。さらに2位のジャック・クインも、シーズン途中で50歳を迎えた1933年シーズンはわずか14試合、15.2イニングに留まっている。
選手 | 年齢 | 現役最終年 |
---|---|---|
サッチェル・ペイジ | 59 | 1965 |
ジャック・クイン | 50 | 1933 |
ホイト・ウィルヘルム | 49 | 1972 |
ジェイミー・モイヤー | 49 | - |
フィル・ニークロ | 48 | 1987 |
ニック・アルトロック | 47 | 1924 |
ノーラン・ライアン | 46 | 1993 |
ジェシー・オロスコ | 46 | 2003 |
チャーリー・ハフ | 46 | 1994 |
ボボ・ニューサム | 46 | 1953 |
トミー・ジョン | 46 | 1989 |
ホッド・リセンビー | 46 | 1945 |
ランディ・ジョンソン | 46 | 2009 |
現役最高齢でも「ヒジさえ戻ればまだまだやれる」。
もちろん現時点でモイヤーが来シーズンの契約を結べる保証はないし、ましてやフルシーズン投げ続けられるという確証などどこにもない。だが長年180cm前後の細身の身体から140kmにも満たない球速で好投を続けてきたモイヤーの投球を見てきているだけに、自然と自分の中で「ヒジさえ戻ればまだまだやれる」という思いが湧き出てしまうのだ。
いずれにせよ、まだモイヤーの投球を実際に目にしたわけではないし、現在の心境を本人の口から聞けたわけでもない。1日も早い入団発表を待ちわびるとともに、来年の春季キャンプで彼の投球を取材できる日を期待して止まない。