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大震災とプロ野球。
ある首位打者が辿った険しい道。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/10/03 11:50

大震災とプロ野球。ある首位打者が辿った険しい道。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

星野監督から楽天の初代キャプテンとして活躍を期待されていた鉄平。「神風ワンダーボーイ」は復活できるか?

「プロ野球が一致団結したら、本当にすごい力になる」

 鉄平は決して雄弁なタイプではない。だが、それは人より多く思いを抱えてしまうため、その感情を言葉に置き換える作業に時間がかかるせいだ。

 だから、その時間さえあれば、鉄平はとめどなく話す。震災後、2週間ほど経て、じっくりと話を聞いたときがまさにそうだった。

 おそらくその間、鉄平は、自分が抱いた気持ちに言葉を与え、その収納場所を心の中に見つけつつある段階にあった。

「プロ野球という組織が一致団結したら、本当にすごい力になるというか、被災地の方々の支えになってやれることができると思うんですよ。野球をやるという方法だけではなく。もちろん、いろんな事情があるので、野球をやらないわけにはいかないんですけど、それが前に出すぎて、少し悲しい気持ちにはなりましたよね。思うところはいっぱいありますよ。でも、それを全部、言うわけにもいかないですからね」

 そんな鉄平の真っ直ぐさに、感動すると同時に、危惧してもいた。

 野球は野球。そういう部屋は、心の中にちゃんと確保してあるのだろうか、と。震災に対する思いが野球の部屋にまで侵入し、スポーツ選手としての心のバランスを失ってしまうことはないのだろうか、と。

一軍に戻ってきた鉄平。今は存分に野球をやって欲しい。

 そう思っていると、鉄平は、開幕直後から打率2割前後と低迷し、8月に入るとついに二軍降格を命じられた。

 もちろん、安易に震災と鉄平の不調を結びつけるつもりはない。だが、技術と心が密接な関係にあるのも事実だ。完成された精密機械のような鉄平のバッティングに、少なからず、震災のことが影響したのではないだろうか。そんなことを考えずにはいられなかった。もちろん、鉄平はそんなことは絶対に言わないだろうが。

 9月19日、およそ2カ月振りに鉄平が一軍に復帰した。

 残り試合はわずかだ。

 野球は野球。

 今はそれでいいのではないか。

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