スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
カウンセルと45打数連続無安打。
~あわや102年ぶりのMLB珍記録~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2011/08/28 08:01
もともと打率の高い選手ではないが(昨年は.250)、ここまで打てないシーズンは初めてだ
MLBにおける「史上最低の○○」とは?
ひとつには、バーゲンの記録が「46打数」から「45打数」に訂正されたことがあるかもしれない。実は〈イライアス〉がこの数字を発表する前、〈ソサエティ・フォー・アメリカンベースボール・リサーチ〉という団体が、バーゲンの記録を「46打数連続無安打」と公表していたのである。
が、〈イライアス〉の異論を受けて〈ソサエティ〉は再調査を行った。そして、「1909年7月14日の試合で、バーゲンは(3度ではなく)2度しか打席に立たなかった」という訂正記事を発表したのである。
ややこしい話だが、昔の野球のリサーチではこういう例が珍しくない。
そんなざわつきを尻目に、カウンセルは黙々と無安打を続け、8月初め、ついに史上3人目の「45打数連続無安打」にたどりついたのだった。
だが結局、カウンセルも記録更新は果たせなかった。いや、102年ぶりの新記録達成をまぬがれた、というほうが適切だろうか。8月5日、代打に立った彼はライト前にヒットを放ち、長いトンネルを脱出したのだ。
それだけではない。闇を抜け出たカウンセルは、8月9日以降の10試合で11打数5安打と打ちまくり、1割4分台だった打率を1割7分3厘にまで改善している。
この数字を見れば、カウンセルも胸を撫で下ろすはずだ。1909年、バーゲンの打率は1割3分9厘だった。読者諸賢はすでにお気づきだろうが、これはMLBで公式に認められた中では「史上最低の」打率なのである。