F1ピットストップBACK NUMBER
レッドブル独走態勢もこれまで!?
追いついたマクラーレンの老練さ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/08/19 10:30
今季カナダGP以来となる2勝目を、F1初優勝の思い出の地ハンガロリンクで挙げたジェンソン・バトン。このレースで、通算200戦目という素晴らしい記録も同時に刻んだ
「フリー走行2回目終了10時間半後から、フリー走行3回目開始3時間前までの間はサーキットにおいて車体の整備を行うことを禁止する」
これは今年から新たに定められたレギュレーションである。
つまり、グランプリ初日(金曜日)のフリー走行が終わった午後3時半から10時間半後となる深夜2時から翌朝8時までは、サーキットでの仕事を禁ずるというものだ。
コンピュータによる車体の走行データ解析技術と通信環境の発達が進んだ現在のF1は、フリー走行で得たデータをサーキットから各国のチームが構えるファクトリーへ送り、高速のコンピュータによって精密に解析し、かつさまざまなシミュレーションを行ったうえで、最適だと思われるデータをサーキットへ送り返して、土曜日以降のセットアップを行っている。
したがって、サーキットの現場で働くスタッフたちだけでなく、ファクトリーの叡智を結集した総合力が重要で、トップチームが大崩れしない理由もここにある。
新しいレギュレーションはこのような過度に進んだ情報合戦を食い止めようと定められた。
新レギュレーションに苦しんだ、HRTやヴァージンなどの下位チーム。
ところが、いざ蓋を開けてみると、この新レギュレーションに苦しんだのはトップチームではなく下位チームだった。
シーズン開幕前のウインターテストで1周も走行できなかったスペインのHRTはぶっつけ本番で開幕戦を迎えたためメルボルンでは開幕前夜から毎晩のように徹夜作業を行ってもなかなか追いつかない。HRTと同様、参戦2年目のヴァージンもトラブルが相次ぎ、金曜日の夜は毎戦作業が遅くまで続いた。
そのため、FIAは救済措置として、「年間4回までは自由に作業しても良い」という時間外労働枠を作った。
そして、その枠をHRT、ヴァージンに続いて、第11戦ハンガリーGPの金曜日の夜に採用して徹夜でセッティング変更を行ったチームがあった。
それはレッドブルだった。