F1ピットストップBACK NUMBER
レッドブル独走態勢もこれまで!?
追いついたマクラーレンの老練さ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/08/19 10:30
今季カナダGP以来となる2勝目を、F1初優勝の思い出の地ハンガロリンクで挙げたジェンソン・バトン。このレースで、通算200戦目という素晴らしい記録も同時に刻んだ
ベッテルは好調なのにトップタイムが出ないレッドブル。
フリー走行1回目で濡れた縁石に足をすくわれてウェバーがクラッシュするというアクシデントにこそ見舞われたものの、チームメートのベッテルには特に問題がなかったはずだった。にもかかわらず、レッドブルは初日2つの練習走行でいずれもトップタイムを記録することができなかったのだ。彼らが初日にトップタイムをマークできなかったのは第4戦トルコGPと第7戦カナダGP以来のことである。
過去の2回はいずれもフリー走行1回目にベッテルがクラッシュして、予定していたプログラムを変更しなければならなかったためという明白な理由があった。しかし、ハンガリーではベッテルに大きな問題がなかったにもかかわらず、タイミングモニターの最上段にレッドブルドライバーの名が載ることはなかった。
レッドブル陣営はハンガリーGP初日、明らかにセットアップを外していたのである。
ついにレッドブルが切った「時間外労働枠使用」というジョーカー。
そこでレッドブルは金曜日の夜に、年間4回しか許可されていない「時間外労働枠を使用する」というジョーカーを切る決断を下した。
通常であれば、金曜日のフリー走行後に大きくセッティングを変更したとしても、深夜1時ぐらいまでには作業は終わるという。それがジョーカーを切って、ベッテルのセッティング変更を朝方までかけて行った。
チームメートのウェバーは「確かにセブ(ベッテルの愛称)はかなり大がかりな変更をリアサスペンションに行った」と言い、ライバルチームの関係者は「何か新しいパーツの到着を待って行った可能性がある」と見る者までいた。
いずれにしても、レッドブルはこのセッティング変更が功を奏し、ベッテルがフリー走行3回目でトップタイムをマーク。予選でも最後のアタックでハミルトンを逆転してポールポジションを獲得した。
しかし、このレッドブルに対して、翌日のレースで別なカードを切ってきたチームがある。
マクラーレンだ。