野球クロスロードBACK NUMBER
“ポスト阿部”を着々と準備する
「育成の巨人」、その強さの源泉。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/03/03 00:00
“ポスト阿部”を着々と準備する「育成の巨人」、その強さの源泉。
レギュラー、控えの分け隔てなくチャンスを与える原監督。
仮に今年、野村コーチの辣腕によって前出の二軍選手が一軍デビューを 果たしたとする。そこからはガチンコの力勝負。本来なら、阿部や鶴岡ら熟練捕手たちを脅かすことはすぐにはできないだろう。
そこで重要となってくるのが、原辰徳監督の存在だ。
レギュラー、控え問わず彼の指導を受けた「元巨人」の選手が異口同音に言うのは、「原さんは誰にでも必ずチャンスを与えてくれる」ということ。
プロ野球を引退した、ある「元巨人」の方がしみじみと語ってくれたことがある。
「原さんは厳しいですよ。『ダメなら試合で使わない。ただ、結果を残せば使う』とはっきりと選手に伝える。ただ、二軍に落とされても、下でしっかりやって いればまた呼んでくれる。巨人の選手層は厚いですけど、何年も二軍でくすぶっているからといって腐って欲しくないんですよね。自分がそうなってしまっただ けに……」
原監督は折に触れ、「別に若手を率先して使っているわけじゃないんですよ」と言う。その真意は、先の巨人OBの言葉にあるように「いいものはいい、ダメ なものはダメ」と、至極シンプルなものなのかもしれない。
信賞必罰の意識が全員に根付いた巨人の強さは侮れない。
実際の指揮系統はもっと複雑だが、二軍には決して選手を腐らせず、根気強く指導できる野村コーチがいる。一軍には分け隔てなくチャンスを与えてくれる原監督の存在がある。何より、捕手ではないが山口鉄也や松本哲也の例でも分かるように、今では「育成枠でも結果を残せば……」という明らかな希望が、若手選手のなかでの共通認識としてある。
それが、野手で最もレギュラー奪取が難しい捕手にまで根付いている。やっぱり「育成の巨人」は侮れない。本当に、そう強く感じる。