日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
ベネズエラ戦はテスト失敗か?
右サイドバックが機能しない理由。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNaoya Sanuki
posted2010/02/03 12:33
「周りと連動して、うまく絡んだ攻撃ができなかった。まだあまり代表で試合をやっていないし、感覚的なものだと思う」
A代表6戦目、右サイドバックで2度目の先発出場を果たした徳永悠平は、自身のプレーに不満そうに声を押し出した。
岡田ジャパンのW杯イヤー国内初戦となったベネズエラ戦は、スコアレスドローに終わった。3年半ぶりに代表復帰して攻撃的MFで先発した小笠原満男や生き残りを懸けて途中出場した平山相太らと同様に、徳永のプレーには関心が集まっていた。このベネズエラ戦で守備の強さだけでなく攻撃面でもアピールできれば、コンディション不良の内田篤人に代わって今後、先発に定着する可能性があるからだ。
だが、徳永が連動して攻撃参加するシーンはほとんど見られなかった。なかなか上がっていけない、もどかしい時間が流れた。
ただこれは徳永ばかりの問題ではない。徳永にしてみれば、上がるにためらう状況があったのは否めない。
徳永悠平が攻撃参加できなかったのはなぜか?
まずひとつはチーム全体としてタメがつくれなかったこと。ボール保持率は63.8%と圧倒しながらも、ベネズエラの激しいプレスにさらされたことで両サイドバックが上がる時間をチーム全体でつくることができなかった。徳永がプレーした後半14分まではその傾向が顕著だった。
「(味方の)お互いの距離が遠くて、パスしてサポートといういつものサッカーができていなかった」
徳永と逆サイドでプレーした長友佑都は、こう振り返っている。
また前半は特に、相手のプレスからボールを奪われる場面が度々あって、カウンターのリスクを考えると思い切って上がれなかった。しかも対峙した相手のサイドバックが上がってこないために裏のスペースを使えない事情もあった。
それともうひとつ。周囲との“呼吸の不一致”も徳永が上がれなかった大きな要因である。これまで徳永が合わせてきた中村俊輔はサイドで起点をつくる特長があり、この日右サイドでプレーした小笠原満男は中に入ってキープする特長、小笠原とポジションチェンジを繰り返した中村憲剛にはシンプルにさばく、とそれぞれに違った特長を持つ。小笠原や中村憲の特長に合わせたタイミングをうまくつかめず、躊躇していたようにも見えた。
経験からくる臨機応変なプレーで光った駒野友一。
徳永とは対照的に、攻撃面で光ったのが交代して入った駒野友一である。
「前半は相手のブロックがしっかりしていて難しいなと思ったけど、後半は相手が間延びしてスペースが出来てきた。サイドのスペースも空いてきたので、自分が高い位置まで行くことができた」
大久保嘉人が中盤に下がってサイドで起点をつくるようになると、チーム全体でピッチを広く使うことで相手プレスの効力を弱めることができ、サイドバックが上がるための土壌が整った。徳永とは違う状況ではあったものの、駒野は高い位置で起点をつくり、新戦力の金崎夢生らとも息の合った連係を披露するなど経験に裏打ちされた柔軟性をアピールしてみせた。終盤には機転を利かせたグラウンダーのクロスや、佐藤寿人へのドンピシャのクロスを送るなど、チャンスを演出してもいる。