Column from SpainBACK NUMBER
ヘタフェは輝きを取り戻せるか。
~リーガにおけるチーム成長物語~
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byJasper Juinen/Getty Images
posted2009/05/08 08:00
継続は力なり。やることなすことに一貫性のあるクラブは強くなる。
たとえば今季のバルセロナがそうだ。ジョゼップ・グアルディオラが監督1年目にして完成度の高いサッカーをできているのは、その基礎が前任のフランク・ライカールト時代と何ら変わっていないからである。
セビージャはほんの10年前まで平凡な中堅クラブだったが、いまでは順位表上位の常連になった。2000年にスポーツディレクターに就任したラモン・ロドリゲス“モンチ”のチーム強化政策にブレがないおかげである。
同様に10年前は弱小だったビジャレアルも補強方針――一番大事なのは“質”だが、コストパフォーマンスも重要――を一定に保ち、マヌエル・ペジェグリーニ監督に長期政権を許したことで、毎年着実にレベルアップしてきた。
ここに本来はヘタフェも入るのだが、残念ながら今季は道を踏み外している。
若さと積極性で伸びてきたヘタフェの失速
'04-'05シーズン、創立21年目にして1部デビューを果たしたヘタフェというクラブの特徴は、若さと野心と小気味よいサッカーだ。これを基にアンヘル・トーレス会長は監督を選択し、チームは力をつけてきた。
1年目は、当時39歳のキケ・サンチェス・フローレス。プロチームの監督経験はゼロだったが、前年レアル・マドリーのユースを優勝させた手腕をトーレスは買い、ヘタフェは見事残留を成し遂げた。
キケをバレンシアに引き抜かれた2年目は、ベルント・シュスター。前シーズン終盤、レバンテを首になっていたが、彼のスタイルであるダイナミックで速いサッカーをトーレスは好み、監督に招いた。ヘタフェは9位でシーズンを終え1部に定着し、3年目には国王杯ファイナリストにもなった。
4年目に当たる昨季は、シュスターが今度はレアル・マドリーに引き抜かれたため、ミカエル・ラウドルップをデンマークから引っ張ってきた。最初の9節は低迷したが、監督解任を求める声をトーレスが無視している間にチームは機能し始め、初出場のUEFAカップではベスト8まで勝ち進んだ。
この3人に共通する武器は、経験ではなくアイデアと勢いである。
ところが今季、トーレスは監督にビクトル・ムニョスを選んでしまった。これまでマヨルカやビジャレアル、サラゴサ、レクレアティボなどを率いてきた準ベテラン。結果重視の堅実なサッカーをするという点でも、これまでの3人とは大きく異なる。
果たして、この4年間「大胆で攻撃的」にやってきたヘタフェとムニョスはミスマッチだった。
どうしようもないほど酷くはない。しかし白星は一向に増えない。序盤の順位こそひと桁だったが、あとは下がっていく一方――。