チャンピオンズリーグの真髄BACK NUMBER
バルサ対マンUの記憶。
――ロマーリオ、極上の男。
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byNaoya Sanuki
posted2009/05/01 06:01
ロマーリオとストイチコフ。世界最高の千両役者たち。
欺かれたのはマンUのディフェンス陣だけではない。スタンドの観衆。ストイチコフ本人も例外ではなかったはずだ。ロマーリオのいたずらじみたプレーに、彼は一瞬、あわてたに違いない。こちらには、ストイチコフの能力を試すような、ロマーリオの底意地の悪さが見て取れた。
だが、そこであわてた素振りを見せないのがストイチコフ。彼もまた千両役者だった。
見事なゴールを、左足でマンUゴールに突き刺したのだ。もちろん、パスを出したロマーリオのもとへ駆け寄ることはなかった。あえて無視するように「オレ様のシュートを見たか」とばかり、スタンドに向けて自らの存在をアピールした。威張り散らすような態度で。
ロマーリオもロマーリオなら、ストイチコフもストイチコフ。
どっちもどっちだ。
ここまで笑えるゴールに遭遇したのは、後にも先にも、僕はこれが初めてである。バルサ対マンUと言われて、連想する一番のシーンになる。
14年以上も前の出来事ながら、脳裏にはいまだ鮮明に焼き付いている。マラドーナの「60m5人抜き」に匹敵するほど。