セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
名門ミランの逆襲が始まる。
~CL・レアル戦勝利から得たもの~
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2009/10/31 10:00
パトとロナウジーニョがようやく本来の力を発揮しはじめた
レオナルドが渇望するのは「目先の1勝じゃない」。
意気上がるミランは、4日後のセリエA第9節キエーボ戦でも3試合連続となる逆転勝利をあげた。後半残り10分を切ってからのネスタのヘディングゴールを生んだのは、長期故障から復帰したFWボリエッロだ。
今のミランに“スター”はいない。一人のプレーヤーに依存することなく、全員がそれぞれのポジションでボール際の“あと一歩、あと5センチ”を追い始めた。ネスタのロスタイム逆転弾が決まった瞬間、ベンチのレオナルドはまるでピッチ上の現役選手のように、大きなガッツポーズのまま宙に跳んだ。叫びすぎで嗄れてはいるが、その声は弾んでいる。
「私が目指しているのは、目先の1勝じゃない。このチームの新たなアイデンティティを作りたいんだ!」
11月3日、レアルとの再戦はミランの行方を占う一戦だ。
ようやく芽の出始めたレオナルド改革だが、もちろん解決すべき課題は残っている。いまだ定まらないFWフンテラールの起用法や不安定そのもののGKがその例だ。
だが、ミランは極端にCLへ特化した異質なクラブで、CLの1勝がチーム全体をレベルアップさせることを経験的に欧州中のどこよりも知っている。欧州王者となった06-07年大会も、決勝トーナメントを勝ちあがっていくにつれ、カウンター攻撃の精度が研ぎ澄まされていった。
選手や上層部がこぞって「CLこそミランのDNA」と口を揃え、セリエAの試合前にもそのテーマ曲を聴いて士気を高めるほど、シーズンにおけるCLの比重は重い。11月3日のCL次節、サン・シーロでのレアルとのリターンマッチは、今後のミランの行方を占う意味でも見逃せない一戦になるだろう。