野ボール横丁BACK NUMBER
泣くな雄星!
逆転の花巻東、散る。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2009/08/24 12:03
真打ち・菊池の登場なのに0-6。事実上のゲームセット。
真打ちの登場に、にわかに球場が活気づく。だが、結果は凶だった。
本調子とはほど遠かった菊池は、河合にいきなり左翼線へ3点三塁打を打たれ、0-6とさらにリードを広げられてしまう。事実上、ここで「ゲームセット」だった。
菊池は5回裏、6番伊藤隆比古に本塁打を許したところでマウンドを降りた。菊池の甲子園ラストゲームは、わずか11球で終わった。「ストレートを投げる方が痛い」と話していた菊池の投げたボールは、11球中9球がスライダーだった。
満を持して菊池を起用するも、投げられる状態にはなく、つかまり、早々にKOされる。こうなったら花巻東は、もう打つ手はない。ただ、準々決勝で、菊池が痛めたときの様子をみる限り、もっともありえそうな展開でもあった。
仮に菊池が4回裏の満塁の場面を切り抜けたとしても、遅かれ早かれ、菊池の状態を考えたら同じような展開になっていただろう。
軽度な故障なら……しかし菊池はこれで良かったのだ。
花巻東は、決して菊池だけのチームではなかった。初戦の長崎日大では3本塁打で5失点した菊池を援護。前の試合、明豊戦では、突然のアクシデントで菊池が降板したにもかかわらず、逆転勝ちしている。
だが中京大中京の壁は、菊池を抜きに戦うには、あまりにも高すぎた。
せめてもう少し軽度な故障であれば、「ひょっとしたら」とも思う。佐々木監督の筋書き通り運ぶ可能性もあった。
だが、菊池の今後のことを考えたら、下手にがんばってしまい傷を深めるよりは、これでよかったのだ。