オリンピックへの道BACK NUMBER
浅田真央は冒険のジャンプで
キム・ヨナ越えに挑む。
~GPツアー第1戦プレビュー~
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byDaiju Kitamura/AFLO SPORT
posted2009/10/15 11:29
技の“完成度”で高得点を叩き出すキム・ヨナに対し、浅田は技の“難易度”で挑むことになる
来年2月のバンクーバー五輪まで4カ月を切り、ウインタースポーツのシーズン開幕が近づいてきている。フィギュアスケートも、10月15日、フランスで開かれるグランプリ・シリーズの初戦、「エリック・ボンパール杯」で幕を開ける。
開幕戦には、日本から女子は浅田真央、中野友加里、男子は織田信成が出場する。注目はなんといっても女子だ。浅田のライバル、キム・ヨナもエントリーしているため、しょっぱなから浅田とキム・ヨナの直接対決となるのだ。
得意技に磨きを掛けたキム・ヨナに死角なし。
「目標はバンクーバーでの金メダル」と明確に語る浅田にとって、最大のライバルとなるのはキム・ヨナである。キム・ヨナは、今年3月の世界選手権で優勝したが、この大会で彼女が出した得点は、女子史上初の200点超えとなる207.71という驚くべきものだった。
フリーでジャンプのミスなどがあった。そして、決して浅田のように、高難度のジャンプがあるわけでもない。にもかかわらず、これだけの得点が出たのである。
その理由をあげるとすれば、この数年、プログラムの内容を大きく変えず、自分の得意とする技に磨きをかけてきた成果としかいいようがない。ジャッジからの評価はきわめて高い。採点競技では印象度もかかわるから、キム・ヨナは有利な立場にいると言える。
未完成なスケーティングに終わった昨シーズンの浅田。
対する浅田は、世界選手権では4位に終わっている。昨シーズンの浅田は、女子のレベルを突き抜けるほどハイレベルな構成のプログラムに挑んだ。それが影響したか、いくつかのミスを犯しての結果であった。
そこまで冒険したのは、オリンピック・イヤーである今シーズンをにらんでのことだ。圧倒的な力をつけることで、オリンピックの頂点を手に入れる、そんな意図があったのだ。それを完成させることなく終わったのが、昨シーズンであった。
「ジャパンオープン」で浅田は再び挑戦した!
では、今シーズンのプログラムはどういう方向性を打ち出すのか。10月3日に行なわれたアイスショーの「ジャパンオープン」は大きな注目を集める場となった。今シーズンの新しいフリーのプログラムのお披露目だったからだ。
出来は、決して芳しいものではなかった。ジャンプでは、2度組み入れたトリプルアクセルをともに失敗するなどミスが相次ぎ、精彩を欠いた。
「気負って、練習してきたことが出せませんでした」
浅田は、演技を振り返り、こう語った。
出来がよくなかったのはたしかだが、この日、もう一つ確認できたのは、やはり、高いレベルのプログラムへの挑戦は今シーズンも続けていくということだ。
浅田自身も、それは自覚している。
「昨シーズンに挑戦してきたことを生かしたいです」