北京をつかめ 女子バレーボールBACK NUMBER
Vol.7 荒木絵里香
オンリーワンを目指して
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byToshiya Kondo
posted2008/01/08 00:00
ずっと周囲から体重を落とすように言われていた荒木は、ワールドグランドチャンピオンズカップの後、約83kgだった体重を10kg近くも落とすことに成功した。しかし、減らしすぎて、球にパワーが乗らなくなってしまい、思うような動きもできなくなったため、少し戻すことにした。
「センターだから体が重すぎるとダメだけど、やっぱり私はスギさん(杉山)たちとは全く違うタイプだから。スギさんは速さで攻めるけど、私にはパワーがあるので、しっかりと力で外国のセンターと勝負しなければ」
開き直って臨んだ06年のワールドグランプリで、ようやく世界を相手に力を発揮することができた荒木は、ポジションを自分のものにしていった。
「普通のセンターが抑えている仕事だけじゃなく、二段トスも試合の中で打ち切ったり、自分が持っているプラスアルファの部分をしっかり出していきたい。このポジションを、絶対に離したくない! 何年もかかってやっと立てるようになった場所だから、本当に、その大事さは、すぐに手に入れた人よりは絶対にわかっていると思います」
全日本のスタメンの座を揺るぎないものにするため、そして世界と戦うために、荒木が次に目指すのは“相手に威圧感を与える選手”だ。
昨年のワールドカップで世界トップレベルのセンターと対峙した時、その力に圧倒された。目の前で見せられた見事なブロックに、コートの中で「すごい!」と息をのんだほどだった。特に衝撃を受けたのが、イタリアのセンター・ジョーリとバラッツァだった。腕を広げたり、コースを読んで塞いでくるブロックに、荒木の速攻は吸い込まれるように1枚でシャットアウトされた。
「あの二人は自分と同じくらいの身長なのに…。ああいう時は手が出ていないところに打てばいいんですけど、もうこっちはハーッとなってしまって、それができなくなっていました。あの時受けた威圧感を、自分も出せるようになりたいんです」
二人の姿をしっかりと頭の中に焼き付け、ワールドカップ後東レに戻っても、常にイメージしながらプレーしてきた。天皇杯決勝では、勝負所で相手のエース・パブロワ(カザフスタン代表)を止めるなど4本のブロックポイントを挙げたほか、しぶとく弾き返したり、ワンタッチでレシーブにつなぐなど、壁となって立ちはだかり、久光製薬のスパイク決定率を33.3%に抑える原動力となった。
ジョーリやバラッツァに、少し近づいているのでは? と聞くと「全然まだまだ。本当にまだまだ、頑張らないと」とかぶりを振った。が、世界を見据える23歳は、コートの中で確かに威圧感を漂わせ始めている。