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心が痺れるような真剣勝負を見た!
伊志嶺翔大vs.福井優也の因縁対決。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/06/15 12:30
6月12日(日)のロッテ対広島。因縁対決直後のシーン。同い年で共にドラフト1位。絶対に負けたくない相手である
負ければ交流戦単独最下位となる6月12日のロッテ対広島戦。勝敗を分けたのは、伊志嶺翔大と福井優也によるルーキー対決だった。
ふたりの間には、少なからず因縁がある。
昨秋の明治神宮大会決勝。東海大の伊志嶺は早稲田の福井から1安打を記録したものの2打席は凡退。チームも敗れ優勝を逃したこともあり、「個人的には1本打ったけど、抑えられた印象のほうが強い」という。
福井は強気だ。「そんなに怖いバッターではない」と、悪いイメージは抱いていない。
借りを返したい伊志嶺と、勝てる相手だと悠然と構える福井。両者のプロ初対決は、ともに大きな収穫を得ることとなった。
勝負所で迷いなく振ったストレート。
殊勲者として収穫を得たのは伊志嶺だった。
2対2で迎えた7回裏、1死一、三塁と絶好のチャンスで伊志嶺が打席に巡ってくる。この試合、それまでの3打席こそ抑えられてはいたが、ベンチから「甘い球を思い切り打て」という指示が出たことで、いい意味で開き直ることができた。
「コンパクトにバットを振って、最低でも外野フライを」と伊志嶺は自分に言い聞かせ、普段よりも指1本分、バットを短く持ち打席に臨む。
カウント3-0からの4球目だった。
「相手は絶対にフォアボールを出したくないでしょうから、ストライクを取りに来たストレートを迷いなく振ろうと決めていました」と本人の言葉通り、真ん中に吸い込まれるように入ってきた138キロのストレートを強振。打球は瞬く間に左中間スタンドに突き刺さる。この一発で勝負は決した。
「まだ興奮しています」と試合後、しばらく経ってからも声を昂らせていた伊志嶺。「福井には抑えられていたので打ててよかった」と安堵の表情を見せながら、「最近打てていなかったので、どうしても打ちたいと思った」と本音を漏らした。