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心が痺れるような真剣勝負を見た!
伊志嶺翔大vs.福井優也の因縁対決。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/06/15 12:30
6月12日(日)のロッテ対広島。因縁対決直後のシーン。同い年で共にドラフト1位。絶対に負けたくない相手である
弱点を克服するべく福井が投げた、渾身のストレート。
それを証明してみせたのが、他ならぬ伊志嶺に打たれたボールだった。
プロ初登板となった4月17日の巨人戦で相手打線を7回2失点に抑え、斎藤佑樹と同時に新人初勝利一番乗りを果たし、幸先の良いスタートを切った。ところが、プロ2戦目となる24日のヤクルト戦では無駄な四球を与え自滅。5月24日のロッテ戦でも、初回に3四球と立ち上がりで乱れ、5回3失点。四球の克服を課題にして臨んだ今回の登板だった。
「フォアボールだけは出さないようにする。打たれてもいいからコースを狙いすぎないようにストライクを積極的に取りにいきたい」
福井はそう自分を戒めた。その結果、先の対戦で伊志嶺に痛打されたわけだが、言うなれば、彼は自分のウイークポイントを克服するべく、それこそ一発を恐れずに自分のボールを投げた、と解釈もできる。
つまり、福井優也という投手は、打たれながら、点を取られながらも着実にレベルアップできる投手、ということだ。
「KK対決」のような黄金世代同士の真剣勝負が見たい!
実際、他球団からの評価は高い。
楽天の星野仙一監督は、「新人とは思えない投球をする。早稲田の3人(福井、斎藤、大石達也)のなかで一番いいんじゃないかな」と、福井の潜在能力の高さを認めている。
しかし、本人からすれば、まだ暗中模索、と言ったところだろうか。
12日、福井は俯きながらこう呟いて球場を後にした。
「勝てない……」
今は勝てていない。しかし、一戦ごとに己の弱点と真摯に向き合える福井なら、必ず勝ち星を積み重ねられる時期がやってくる。
カウント3-0からストレートを迷いなく振り切った伊志嶺。
ウイークポイントを克服するべくストレートを投じた福井。
桑田真澄、清原和博の「KK対決」のように、黄金世代の真剣勝負はいつみても心が痺れるものだ。
同世代にはまだまだ逸材がいる。今後、ふたりのような対決が増えれば、今シーズンの野球はますます盛り上がる。