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F1界の根幹を揺るがした、
ブリヂストン「撤退」の衝撃。
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byHiroshi Kaneko
posted2009/11/15 08:00
ミシュランやグッドイヤーを抜き世界シェアと売り上げ高で1位のブリヂストン。'06年のドイツGPにおいてF1通算100勝の偉業も達成している
韓国の2大メーカーには技術的な障壁が。
他にはないかと頭を巡らせば、韓国にクムホ、ハンコックと二つのタイヤメーカーがあった。
来年からF1韓国グランプリが開かれるとあっては、両メーカーにとって喉から手がでるほどのチャンスだろう。とりわけクムホはマカオF3グランプリにタイヤを独占供給し、日本のスーパーGT300にも参戦している。次は一気にF1だ! と考えてもおかしくない。ただし、現実問題としてさまざまな障害がある。
ひとつは技術的問題。
BSがF1参戦翌年の1998年にチャンピオンを獲れたのは、参戦前年の1996年までにF3000、インディ、ル・マン(グループC)、DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)などに手広く参戦し、ル・マンを除いてはチャンピオンを奪るという堂々たる実績があったからだ。それをベースにしてのF1タイヤ参入だったのだ。そうした技術蓄積が韓国タイヤメーカーにはないし、また年間4万本に上るF1タイヤを製造する設備があるかどうかも疑問。さらにF1のルールではきびしいテスト制限が設けられており、タイヤができたからといっておいそれと転がすわけにはいかない事情もある。
「再来年からウチ以外のメーカーがF1タイヤを供給するとしたら、各チームが2011年用マシン開発に本格的に取り組む来年2010年夏までにはタイヤを造らなければならない。そのためのスタートはギリギリで……今でしょう」とBSのエンジニア氏。どうやら韓国タイヤメーカーには荷が重そうだ。
韓国メーカーにOEM供給すれば問題は解決!?
となると話は振り出しに戻ってしまう。
そこで素人考えながらひとつの解決策を。韓国タイヤメーカーがBSとOEM(相手先ブランドによる供給)契約を結ぶというのではどうだろうか? BSとしてはエンジニア、タイヤフィッターを含む70人余りの人的リソースをリストラすることなく禅譲できるし、費用負担も激減する。
ただしこのBS・OEM戦略(!?)にも難点がある。それはウォン安。とりわけいまが円高とあっては年間三桁の億(円)を韓国メーカーが出すのは酷かもしれない。