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日本代表、明日のための「3-4-3」。
チェコ戦で見せた世界への布石。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNaoya Sanuki
posted2011/06/08 12:30
「いろいろな要素があって監督がポジティブなことを言うのは想像できるけど、そのレベルで会話をしてはいけないと思う」と試合後に語った本田。選手自身の向上心とモチベーションが、このチェコ戦でさらに上がったことは間違いない
システムは消化不良だが、臨機応変に戦うことはできた。
また、相手の戦いに応じた工夫をチェコ戦で見ることができた。
チェコはサイドで主導権を奪われないようにサイドを封じて、スペースを消してきた。そこで中央にスペースが生まれるようになり、本田圭佑が3トップの右ウイングとして張るのではなく、中に入ってプレーするようになった。李忠成と岡崎が2トップのような形になり、本田が中のスペースを使うことによってサイドを活かそうとした。
システムに縛られず、臨機応変に対応できたことはペルー戦になかった収穫だった。
ここ数日間のトレーニングは3-4-3の細かいポジション取りを含めた約束事が“詰め込み作業”としてあった。しかしザッケローニは試合前、選手たちに「スタートポジションと最後のフィニッシュのところだけイメージを持てばいい。アプローチには固執するな」と指示している。約束事でがんじがらめになって消極的なプレーになってしまうことを指揮官は何よりも嫌がった。選手に柔軟的に対応させるため、敢えてそう言ったのだ。
新システムを用いてまだ2戦目であることを考えても、この試合の内容が及第点であったことは言うまでもない。
しかしながらこのシステムが十分に機能するには、まだまだ乗り越えるべき課題が多い。守備もさることながら、無得点に終わった攻撃面の問題点をここでは取り上げていきたい。
3-4-3はクサビに入ってからシュートまでがカギを握る。
ザッケローニの3-4-3は縦に速い攻撃を信条とする。
そのため、クサビに入ってからどうシュートまで結びつけるかがカギを握る。クサビの受け手が、重要な役割を担ってくると言える。
この日は3トップ中央の李が体を張ってキープしようとするのだが、激しいチェックにあって“間”をつくることに苦労していた。ダイレクトではたくプレーなど李なりの工夫は評価してあげたい。ただ、ここで時間をつくれないと長友や内田も引き込んで攻撃で数的有利をつくるのが難しくなる。
李とともにクサビを意識してプレーしていた3トップの一角を務めた岡崎も、局面でのプレーの判断に難しさを感じていた。背負う時間が短ければ、違う工夫も必要になる。
「(相手を)押し込めることはできていたと思うんです。そこからの自分の動きというのは、まだちょっと……。相手を背負っていれば近くに預けて、もう1回自分がゴール前に入っていくようなプレーをしていかないといけない。相手が(ボールを奪いに)グッとくるのであれば中にターンして入っていくなど、そういう使い分けをしていく必要があると思う。そうしていかないとこのような守備の堅い相手を崩すことはできない」
もちろんクサビの受け手のプレーが重要になる。ただ、サポートの動き、3人目の動きがあってこそ初めてポストプレーが活きてくる。