スポーツの正しい見方BACK NUMBER
W杯最終予選で露見した
岡田ジャパンの脆さ。
text by
海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa
photograph byTamon Matsuzono
posted2009/06/27 06:00
ワールドカップ・アジア最終予選の最後の3試合を前にして、日本が勝つのは当然として、それ以上に、どんな勝ち方をしてくれるのだろうと期待した人は多いだろう。
直前におこなわれたキリンカップのチリ戦とベルギー戦での勝利があまりにもあざやかだったからだ。
両試合とも、4対0という近年にない大勝だったばかりでなく、岡田監督は中村憲剛をいつものボランチではなくトップ下で使ったり、チリ戦の前半途中からはレッズの18歳の山田直輝を交代出場させたりした。そして、それらがことごとく当たったのである。
試合後、岡田監督は自信たっぷりに語った。
「2カ月ちょっと空いても、まったく違和感なくできている。チームとして変えない部分、ベースとなる部分がしっかりできていた。われわれのやろうとしていることが、選手たちの体にしみついている。誰が試合に出ても同じようにできるだろう」
つまり、チームは完成したといわんばかりだったのである。
1軍半相手に圧勝したからといって何の意味がある?
これで最終予選の最後の3試合に期待しなかったとしたら、その人は相当のヘソ曲がりということになろう。
ぼくは、いうまでもなく、そのヘソ曲がりだ。そのうえ、ベルギー戦の試合終了のホイッスル直後の日本代表選手たちのいかにも浮かない顔を見てしまったのだ。ビデオを録った人は、もう一度見なおしてみるといい。4対0で勝ったよろこびに浸って、笑っている選手は一人もいないから。
おそらく、彼らは肉体と肉体をぶつけ合って戦ってみて、ベルギー代表とは名ばかりで、じっさいは1軍半のチームだったことを知らされたのである。そんなチームに大勝したところで何の意味があろう。日本代表選手たちの浮かない顔はそういっていたのだ。
チリ戦も、きっと同じだったであろう。そもそも、ワールドカップ予選を戦っている最中に、どこの国がベストメンバーの代表を連れて地球の裏側までやってくるか。常識的に考えれば、誰にでも分かることだ。つまり、キリンカップで日本代表がよく見えたのは、相手が好きなようにさせてくれたからなのである。
最終予選のラスト3試合が日本代表の真の実力だ。
はたして、最終予選の最後の3試合の結果はまことに無様なものだった。ウズベキスタンには何とか1対0で勝ってワールドカップ出場を決めたが、先制したあとは攻められっぱなしで同点にされなかったのが不思議なくらいだったし、カタールには先制後に同点にされ、オーストラリアには先制後に逆転された。
「われわれのやろうとしていることが、選手たちの体にしみついている。誰が試合に出ても同じようにできるだろう」
それがまったくできなかったのである。キリンカップの現実を無視したところから導き出された結論だったのだから当然のことだ。パスも通らず、出場停止や体調不良の選手の代わりに出た選手も、最後までチームにフィットしなかった。
なかでも、大型選手ぞろいのオーストラリア戦で、中澤の代わりに阿部勇樹をセンターバックで使ったのにはおどろいた。きっと、誰が試合に出ても同じようにできるということを証明したかったのだろうが、いかにも1人よがりの采配だった。
しかし、失望することはない。キリンカップの結果は親善試合においてよく見られるもので、そのあとの3試合の結果が真の実力だと分かったのである。そう思えば、「本大会でベスト4を目指す」という岡田監督のスローガンも、笑ってきき流すことができるだろう。