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【ドリーム・チーム史上最大の挑戦】 満身創痍で予選突破、金まであと2勝。  

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2004/08/24 00:00

【ドリーム・チーム史上最大の挑戦】 満身創痍で予選突破、金まであと2勝。 <Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 高橋の3戦連続ホームランなどで地元ギリシャを破った日本が、予選リーグを1位で突破した。アテネ五輪野球の日本代表は22日、エリニコ・オリンピック・コンプレックスで予選最終戦となるギリシャ戦を戦った。試合は2回に小笠原の二塁打で先制した日本が6回には谷の適時打、7回には福留の2ランと高橋の3試合連続アーチなど打線が爆発。投げても体調不良で先発回避した岩隈の代役・清水が7回途中まで4安打1失点と好投して6対1で完勝した。日本は予選リーグの1位突破が決定。24日の第1試合(日本時間午後5時30分)で同4位の豪州と決勝進出をかけて激突する。

 格下のギリシャ相手にジリジリした試合展開だった。2回に1点を先行、6回には谷の適時打で2点目を奪い、ようやく本領を発揮したのが7回の攻撃だ。1死一塁。まずは福留のバットが火を噴いた。「5回のチャンスで仕事が出来ず(1死一、三塁で二ゴロ併殺)、重苦しい雰囲気を作ってしまったので、何とか結果を出したかった。2球目に流していい当たりのファウルを打っていたので、必ず振り切ってやろうと思っていました」というところに入ってきた甘いスライダーだった。快音を残した打球はきれいな放物線を描いて右翼フェンスを越えていった。

 この一撃に続いたのがヨシノブだ。宮本の中前安打の1死一塁、外角高めの見送ればボール球。それでもいまの高橋には関係ない。逆らわずにきれいに打ち返した打球は、理想的な角度で左方向に上がっていった。オリンピックで日本人選手としてはシドニー五輪の松中以来という3戦連発。しかもすべてが左翼方向というのが、技術の高さの証明だった。「もっと早く打ちたかったですね。(3戦連発は)記録を作るためにここに来たわけじゃないから関係ない。もちろん予選を通過するためにきたわけでもないので、あと2試合、やるだけです」勝負を決めた一撃にも高橋の端正な顔は改めて引き締まった。

 21日に先発予定だった岩隈が風邪で発熱。前夜に大野投手コーチから「いってくれるか」と先発を言われた清水も、豪州戦のリベンジはきっちりと果たした。序盤の競り合った展開にも、6回まで3安打9奪三振とギリシャ打線を完封。蒸し暑いコンディションの中で7回にはスタミナ切れでパパスのソロを浴び、四球を出したところで岩瀬にマウンドを譲ったが、待望の五輪1勝を手に入れた。

 「最高の形で予選を締めくくれた。この予選期間の戦いを通じてチーム全体がいい形で引き締まっていったと思う。あとは2つ勝って帰るだけです」と語ったのは中畑ヘッドだった。この日の第2試合でカナダと豪州が対戦。その敗者が準決勝の対戦相手となるため、夜には中畑ヘッド、高木コーチに準決勝先発予定の松坂、城島、宮本、高橋ら総勢10人が試合を観戦した。結局、メンバーを落とした豪州がカナダに敗れたが「日本とやりたいということなんでしょうね。なめてますね。今度はキチっとした形で勝ちます」(宮本)という言葉は、ナインすべての気持ちの代弁だった。

 17日のキューバ戦で右腕に打球を受けた松坂は「問題はありません。大丈夫です」とほぼ万全態勢でマウンドに上がれる見込み。しかし21日のチャイニーズ・タイペイ戦で上原が右人差し指の爪を傷めた。この日のギリシャ戦では高橋が右上腕に死球を受け、5回の守備では併殺プレーで宮本が右膝に相手の足が入って7回に退くなどチームは満身創痍の状態ではある。

「それはそうだが、ここまできたら骨が折れていてもやってもらう。選手だってそれぐらいの気持ちでやっているはずだよ」と中畑ヘッドの声には力がこもった。泣いても笑ってもあと2試合。金メダルに必要なのは、全員で2つの白星をつかむことだけとなった。

中村真人
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