Jリーグ観察記BACK NUMBER
日本サッカーの弱点なのか?
フィジカルコーチに注目せよ。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2009/10/04 08:00
今季はリーグ戦での先発はないが、途中出場から結果を残しているガンバ大阪の播戸竜二
優秀なフィジカルコーチがゴール数の差を付ける。
しかし、これはあくまでリーグ全体でのデータだ。チーム単位で見ると、偏りがあることがわかる。
優れているのは、ガンバ大阪と柏。計7試合で途中出場の選手がゴールを決めた(26.9%)。これに5試合の大宮が続く(19.2%)。ちなみにガンバは播戸竜二(写真)とチョ・ジェジンが、柏は北嶋秀朗とポポが、それぞれジョーカーとして2試合で点を決めている。
一方で、3試合以下のチームがたくさんある。浦和、FC東京、川崎、横浜FMが3試合。広島、磐田、ジェフ千葉が2試合。新潟、大分は1試合のみとなっている。もちろん“スーパーサブ”が点を決めたからといって上位に行けるわけではないが、ここでは論点をはっきりさせるために他の要因は脇に置いておくことにしよう。
上にあげた“3試合以下”のチームには共通点がある。
まず浦和、広島、大分にはフィジカルコーチが存在していないということ。Jリーグの中で、フィジカルコーチがいないのは、この3チームと京都だけだ。
また、FC東京、川崎、横浜FM、磐田、ジェフ千葉、新潟には、日本人のフィジカルコーチしかいない。これに対して途中出場選手が高い数字を残しているガンバ大阪、柏(7月から新ブラジル人コーチ)、大宮は外国人フィジカルコーチを雇っている。同じく外国人を雇う鹿島と名古屋も、4試合とまずまずの数字。もちろん川崎の里内猛を筆頭に優秀な日本人フィジカルコーチはたくさんいるが、外国からより幅広い知識を得ようとする努力は(少なくとも途中出場という面で)実を結んでいると言えるだろう。
高まり続けるフィジカルコーチの重要性。
今季、名古屋のフィジカルコーチに就任したロジェ・プロポは、「ウォーミングアップの質が、試合を決定づけることがある」と言い切る。プロポはこれまでにマルセイユ、パリ・サンジェルマン、フルハムで同職を歴任してきた気鋭のフランス人コーチだ。
「ウォーミングアップというのは、リーグの仕組みにも影響される。たとえばヨーロッパと日本の大きな違いは、Jリーグではコーチが直接ウォーミングアップに関われるということ。ヨーロッパでは、試合中のウォーミングアップは選手だけでやらなければいけない。さらにプレミアリーグの場合、3人しか同時にアップできないからね。チャンピオンズリーグやAマッチもそうだ。こういう違いに合わせて、選手のコンディションを管理する必要がある。試合中、いつ監督が声をかけるかわからないので難しさもあるが、とてもやりがいのある仕事だよ」
近年サッカー界では、フィジカルコーチの重要性が一層高まってきている。ロシア代表のヒディンク監督が、名フィジカルコーチのレイモンド・フェルヘイエンをオランダから呼び寄せ、選手の肉体改造を行ったのは有名な話だ。ユーロ2008でのロシアの躍進は、このコーチなしには実現しなかっただろう。昨季ブンデスリーガを制したボルフスブルクでは、元陸軍中尉のベルナー・ロイタルトが、軍隊流のやり方で選手を鍛え上げた(今季マガト監督とともにシャルケへ移籍)。
国籍は問わず、多くの名フィジカルコーチがJリーグに集まれば、さらに日本サッカーのレベルが上がるはず。ヒディンクの右腕のフェルヘイエンのような、伝説的なフィジカルコーチがJリーグから生まれることを期待したい。