オリンピックへの道BACK NUMBER
リオデジャネイロの評価、急上昇。
東京が主張すべき“五輪の理念”。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKYODO
posted2009/09/20 08:00
IOC評価委の視察を前に、鏡開きで気勢を上げる石原都知事(左から3人目)ら東京五輪招致委のメンバーら
2016年夏季五輪の開催地は10月2日に決定される。ちょうど1カ月前にあたる9月2日、国際オリンピック委員会(IOC)が立候補する4都市(東京、シカゴ、リオデジャネイロ、マドリード)の評価報告書を公表した。
昨年6月に7つの立候補都市から4都市に絞り込んだ一次選考の際の評価とは異なる今回の報告書の内容からは、いくつかの事実が指摘できる。「シカゴと東京の争い」と見ていた東京五輪の招致に携わる人々の予測を裏切る内容でもある。
一次選考最下位のリオデジャネイロの評価が急上昇。
まず、一次選考でトップ評価を受けた東京は、どのように見られたか。財政面や治安での高評価は相変わらずだったが、一次選考でも指摘のあった世論の支持の低さに加え、スタジアム周辺の交通の問題、選手村の面積などでの懸念が加えられた。
評価が上がったのは、リオデジャネイロである。今回の報告書は順位付けをしていないが、「とても」質が高い、と表現されたのはリオデジャネイロのみ。一次選考のときは最下位での通過だったことを考えても、意外な感があった。
「ちょっと予想外でしたね」
招致に携わるスタッフも認める。
公表を受けて、翌日の3日に招致委員会の記者会見を開いた。日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長はこう語った。
「開催理念、構想などに高い評価をいただけました。招致に向けて大きな弾みがつきます」
また、石原慎太郎都知事も、「これで実現が近づいた」とコメントを出している。
前向きに捉える向きが多いのだ。
初の南米開催を希望するロゲ会長の意向を反映との噂。
一方で、深刻に受け止める向きもある。
「IOCの意志を感じます。現状では東京は楽観視できないですね」
事務方のスタッフはこう語る。
IOCの意志とは何か。
「2008年の夏季五輪開催都市に北京が決まったときの流れを思い出します。あのとき、北京のほかにパリ、トロント、日本からは大阪などが立候補していました。その中で、既存施設が充実する大阪よりも、たいていの会場を新設するとしていた、つまり青写真のみだった北京に対し、IOCは当初から高い評価を与えていました。北京での開催を望んでいたからだと言われています。リオデジャネイロに対して好意的な文言を並べたのも同様なのではないでしょうか」
実際、IOCのロゲ会長には、今までオリンピックを開いたことのない南米で開催したいという意志があるとも噂されている。
そういう点からすると、リオデジャネイロが浮上したといえる。
とはいえ、IOC上層部の影響力も見過ごせないが、投票する委員すべての意志をコントロールできるわけではない。また、有力視されていた都市が敗れるケースもある。例えば、2012年の開催都市の本命といわれていたのはパリだったが、ロンドンが最後に逆転した。開催都市を決める総会でのアピールが委員を動かしたことが大きかった。
それは今回にもあてはまる。