野球クロスロードBACK NUMBER
ロッテのファン騒動も一件落着!?
ボビーと西岡のチーム愛が溢れた夜。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2009/10/07 13:00
ホーム最終戦。球場でファンの声を拾ってみると……。
だから、といってはなんだが、ファンの声を聞いた。私設応援団と交流を持つ若い会社員は、「あの横断幕はない」と、やや怒っていた。
「今のファンは『強いロッテ』しか知らないんです。ボビーをリスペクトしているのは分かるけど、僕らはチームを応援するために球場へ行っているわけですから。強くても弱くても一丸になってチームを応援する。それが本当のファンの姿」
川崎球場時代からロッテを熱烈に応援する自営業の中年男性は「ファンの気持ちも分かる」と肯定的だ。
「27日はベニーの突然の退団表明にもびっくりしましたけど……試合途中から西岡選手の批判に気づきました。あそこまではやっちゃいけないと思いますけど、気持ちは分かりますよ。横断幕を作った人たちは、『自分たちは球団から無視された』と寂しかったんですよ、きっと」
横断幕にも西岡にも、チームを愛する「心」があった。
批判の横断幕を掲げたファンを、新聞記事は「心ない」と表現していたが、あれだけ大きな横断幕を作製するにはかなりの時間がかかる。そこには、「何かを伝えたい」という「心」が確かに存在しているはずだ。
西岡の問題にしても、批判する向きもあるが、ほとんどが彼を擁護する優しいファンのようだった。ここにももちろん心がある。
そして、西岡本人にも心がある。WBC直後の言葉が何よりの証拠だ。
「僕にとっては千葉ロッテのユニフォームを着てプレーすることが一番大事なんです。そこでファンに認めてもらえて初めて日本代表になれるんやと思います」
代表選手になるならないの前に、まずチームのことを第一に想う。千葉ロッテの選手にとって一流の証とは、「ファンに認められる」ことなのだ。
ボビー勇退に際して、マリンスタジアムは一体感に包まれた。
10月6日は、結局、何も起こらなかった。過激なファンが、横断幕を警備員に没収されて騒ぎを起こすこともなかったし、試合中に選手や球団を腕組み睥睨し、罵声を浴びせることもなかった。
なんだかんだ言っても、ファンはやっぱり千葉ロッテが大好きなのだ。だからこそ、ボビー・バレンタインはセレモニーで、こう力強く宣言したのだと思う。
「これから私は千葉ロッテのファンです!」
来シーズン、チームの組閣は大きく変わる。もしかしたら好成績は収められないかもしれない。ただ、ボビーがファンでいてくれる限り、あのような横断幕を目にすることは、もうないだろう。