日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
ラモス監督が世界を驚愕させた!
ビーチサッカーW杯ベスト8の教訓。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2009/11/28 08:00
成田への凱旋帰国早々にコメントを発表したラモス瑠偉監督。この時は、11人制の代表監督にも興味を示す発言まで飛び出した
チームを引き締めるためにあえて激高することも……。
しかし、ラモスは快勝にも喜んでいなかった。エルサルバドル戦の試合終了を待たずにベンチを立ち去っている。選手が自分の指示に反したプレーをしたために、怒りをあらわにしたのだ。1位通過だろうが、快勝だろうが、指示の無視を許すわけにはいかなかった。「監督がいらないなら、それでいい」とラモスの激高ぶりはすさまじく、試合後も選手たちとの接触を避けた。その日の夕食と翌日の朝食でも席を一緒にしなかったという徹底ぶり。ラモスは何より選手たちの心に隙が生まれたことを、危惧していたのである。
穿った見方をするなら「雨降って地固まる」をラモス自ら演出したように思えてしまう。必要以上にラモスは怒りの色を強めたのではないだろうか。
絶妙のタイミングで選手たちの気持ちを引き締めたことによって、チームは再び結束する。
ポルトガル戦のミーティングの席で一体感を感じ取ったラモスは、「これなら勝てるかもしれない」と思ったという。ポルトガル戦は終了間際に決勝点となるFKを決められてしまったが、勝利への執念が最後まで消えることはなかった。さらなる奇跡まであと一歩のところまで迫っていた。
岡田ジャパンもモチベーション管理には学ぶところがある。
岡田ジャパンはモチベーションのコントロールについて、もう少しだけ目を向けてもいいかもしれない。
歴代最強との呼び声高かったジーコジャパンが、ドイツW杯で輝けなかったことと決して無関係ではないからだ。直前のドイツ戦ではほぼ互角の戦いを見せるなど順調な仕上がりを見せていたのに、本大会では力を十分に発揮できなかった。
現役を引退した福西崇史は当時を振り返って、こんなことを言っている。
「ドイツと練習試合をしたとき、チーム(の気持ち)が一度引き締まったんです。でもその後のマルタ戦の後、1週間空いたのでそのときにもう1度みんなで話をしてもよかったのかな、と今になって思う。チームで長く一緒にいて“慣れ”みたいなものもあったから、空気的に引き締める必要があったのかもしれない」
気持ちが緩みかけたときに引き締めを図る――。世界レベルの個との能力差を「組織力」で埋めようとする日本代表にとって、モチベーションのコントロールは外せない要素なのである。
岡田武史監督も選手のモチベーションをマネジメントできる指揮官として定評はある。だが、疲労困憊の選手たちを見事に奮い立たせた今回の“ラモス式コントロール術”は相当に参考になったはずである。
モチベーション操作をはじめ、チーム構成、調整法などラモスジャパンの快進撃を検証しない手はあるまい。
そこにはきっと世界を驚かせるためのヒントが隠されている。