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ラモス監督が世界を驚愕させた!
ビーチサッカーW杯ベスト8の教訓。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2009/11/28 08:00
成田への凱旋帰国早々にコメントを発表したラモス瑠偉監督。この時は、11人制の代表監督にも興味を示す発言まで飛び出した
「あいつらはよくやったゼ。世界を驚かせることができたと思っているし、彼らは“砂浜のサムライ”だったヨ!」
これはビーチサッカーW杯(ドバイ開催)で日本代表をベスト8に導いたラモス瑠偉監督の成田に着いての帰国第一声だ。
ビーチサッカー日本代表のラモスジャパンはアジア予選(ドバイ開催)を1位で突破して初めてアジア王者となった。そして間断なく同地で開催されたW杯本大会ではグループリーグを3連勝(1PK勝ち含む)で1位突破してベスト8入りを果たした。迎えた準々決勝ではブラジルと並んで優勝候補の一角に挙げられていたポルトガルに1-2で敗れたものの、強豪を大いに苦しめたのだ。
今大会におけるラモスジャパンの健闘ぶりはFIFA公式サイトのレポートでも「surprise」と伝えられ、各チームから次々と指揮官に賞賛の言葉が送られたという。
ラモス監督が腐心した、選手たちのモチベーション管理。
11人制のサッカーと、ビーチサッカーでは競技が違う。
世界列強とのレベルの差も11人制に比べれば、ビーチサッカーのほうが小さいに違いない。単純に比較できないことは百も承知している。しかしながら、ラモスが披露したモチベーションのマネジメントはビーチサッカーの世界だけにとどまらず、短期決戦において大事な要素だとあらためて痛感させられた。
ラモスは「全員、体がボロボロだった」と打ち明ける。
アジア予選から準々決勝のポルトガル戦まで、13日間で8試合を消化。限られた時間では相手チームの情報も集められないため、とにかく指揮官は満身創痍の選手たちのモチベーションを上げることに腐心した。指揮官が最も重視する「日の丸を背負って戦う誇り」を、ときに厳しい口調で、ときに優しい口調で試合のたびに植えつけていったのである。
ある時は労いの言葉で、またある時は鼓舞する言葉を。
グループリーグ初戦のスペイン戦の前は「(アジア予選は)ようやった。せめてベスト8に行こう」と選手を大いに労っている。
第3戦のエルサルバドル戦の前は全面的な鼓舞であった。ホテル内で偶然出くわしたエルサルバドルの選手が「日本には3-0で勝てる」と会話していたというエピソードを持ち出し、「あいつらは俺たちを全然大したことないと思っている! 悔しくないのか!」とまくしたてた。その効果もあって、既に決勝トーナメント進出を決めてモチベーションが落ちても仕方のない試合を、7-2の大差できっちり勝利を収めている。