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大黒将志 「ハードマーク歓迎」 

text by

佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

PROFILE

posted2005/03/17 11:03

 Jリーグ開幕戦、優勝候補の一角に挙げられていたガンバ大阪は、J1初陣の大宮アルディージャに0-2と敗れた。

 大宮の三浦俊也監督は「ガンバのパスサッカーと中央からの攻めについては、もちろん研究していた。その成果が出た」と胸を張った。大宮の徹底したゾーンディフェンスと球際の厳しさが際立ったが、結果はガンバの自滅によるものだった。遠藤保仁は「球離れが遅い、運動量もない、球際が甘い」と反省しきりだった。加えて選手交代で3バックから4バックへと変更直後に失点するなど集中力を持続できなかった。とにかく昨年の爆発的な攻撃が完全に影を潜めてしまったのである。過ぎ行く時間とともに静まり返る万博記念競技場で、ただ大黒将志にボールが回ったときだけスタンドが沸いた。しかし、彼もまた期待に応えられなかった。放ったシュートは、わずかに3本。日本代表を救った時のようには、大黒はこの日、ガンバを救えなかった。

 「この騒ぎ異常っすよね」

 大黒は困惑して、そう言った。

 ちょうど1カ月前、彼の周辺は一変した。2月9日、ワールドカップ最終予選の北朝鮮戦に途中出場し、ロスタイムに決勝ゴールを挙げた。一夜にして国民的ヒーローになると、その夜から広報担当者の携帯には、取材依頼の電話がひっきりなしにかかってきたという。宮崎県綾町のキャンプには過去最高の報道陣とファンが集まり、“大黒”が町おこしになったほどだった。だが、そういった喧騒にも大黒は浮かれることはなかった。むしろ、コンディションを気にしていつも以上に入念に走り込むなどケアをしっかりと続けた。

 大黒の才能が大きく開花したのは'04年シーズンだった。だが、実は'03年シーズンでもすでに10ゴールを挙げており、'04年の大ブレイクの伏線になっていた。

 「なんでも一年一年の積み重ねやと思うんですよ。'03年は試合に出してもらってJリーグがどんなレベルかというのが分かったし、自分に何が足りないかっていうのも分かった。そこで思ったんは、FWはどこからでも点が取れることが理想やということ。だから、'04年シーズン前はヘディングとかメチャ練習しましたもん。ボール吊して、ヘディングしたらボヨ~ンって戻ってくるのあるじゃないですか。あれ、やりました。あと、自分は高さがないんで、試合中もポジショニングとか、ゴール前に入るタイミングとかかなり意識してやっていましたね。で、昨年のヘディングのデータを見ると14本ヘディング・シュート打って7点決めているんです。確率的にはいい。けど、もっと取れたと思う。それは、今年の自分のテーマになっています」

 大黒が昨年挙げた20 ゴール中、ヘディングからは7点、右足が8点、左足が5点だった。どこでも点が取れる嫌らしさが身に付いた。しかもその内訳を見ると1stステージが9点、2ndステージでは11点を挙げている。この数字は、実は大きな意味を持っている。1stステージでの9得点は、大黒自身がほとんどノーマークの状態で決めたゴールだった。だが、ブレイクした2ndステージの11点は、マークが一層厳しくなった状況下で奪ったものだ。厳しい状況に置かれながらも1st ステージ以上のゴールを奪うというのは、大黒自身の成長なくしては達成できない数字だ。

 「昨年の2ndのマークは、ほんま凄かった。むちゃ来てましたもん。ボールとか見んと僕のこと見ている人とかおったからね。でも、楽しかった。厳しいマークの中でゴールを挙げれば、もっとレベルアップできると思うからね。だから、マークから逃げるんやなく、勝負してやろうって思った」

 もうひとつ、大黒の成長の跡が見えるデータがあった。昨シーズン、ハットトリックを2回も達成しているのである。つまり、固め打ちができるようになったのだ。

 「そう、それがでかい。'03年とかは、それがまったくできんかった。1点取るのが限界やった。そういう意味では2点越えて3点を取ることができたんは、やっぱりレベルアップしているんやなって思うね」

(以下、Number623号へ)

大黒将志
ガンバ大阪

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