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<美しき孤高の滑走者> 岡崎朋美 「38歳、五度目の正直」 ~特集:バンクーバーに挑む~
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKenta Yoshizawa
posted2009/12/19 08:00
北京五輪で躍動する選手たちが岡崎のスイッチを入れた。
トリノ五輪後、岡崎はバンクーバーに改めて照準を合わせた。現在に至るまで、時期によってメリハリをつけるなどして、うまく調整を進めてきたように見受けられる。
「精神的にも肉体的にも追い込んで挑んだトリノだったので、1年くらいは休みたいなという気持ちはありました。ただ、スケートは一回休むと、ゼロからの再スタートになってしまう。だからトリノの後の1年くらいは、気持ちの上ではほどほどに、練習も体を壊さない程度に、それでいてワールドカップに出場できるくらいの順位は保ちながら、というスタンスでいましたね。
それと私は、冬季五輪の間に行なわれる夏のオリンピックにいつも刺激を受けるんです。今回も北京で活躍する選手を見て、応援して、『じゃあ次は冬季だ』と、自分の中でスイッチが入りました」
その言葉通り、バンクーバー五輪のプレシーズンとなった昨シーズン、岡崎は見事な切り替えを見せた。シーズンの序盤はひやひやするレースもあったが、選考が絡むレースではしっかり結果を出してきた。
37歳にして自己ベストを更新。飽くなき向上心の賜だ。
'07-'08年シーズンの後半戦はコンディションが整わずに代表から外されていたが、やがて何事もなかったかのように代表に復帰。昨季は後半戦に入ってさらに調子を上げ、今年3月7日のワールドカップ最終戦ソルトレークシティ大会では、4年ぶりに自己ベストを0秒07更新した。37秒66のタイムは、昨季の日本選手ランキング1位だった。
37歳での自己ベスト更新は見事の一言に尽きる。どこが改善されたのか。
「カーブでのスケーティングと、膝を低くして滑るフォーム、その2点です。トリノではカーブで失敗したので、そこはどうしても克服したい。私の場合、子供のころの悪い癖がそのまま残っていて、カーブはいまだに正しいフォームで滑れていない。小学生の上手な子より下手なくらいです。まだ取り組んでいる最中ですけど、自己ベストを出した3月のレースで、20年目にしてやっと『これかな?』という感触がつかめました。もう一つ、膝の位置を低くするフォーム改造にも取り組んでいて、こちらも完成しつつあります。体勢が低いとお尻の筋肉をすごく使うので、この夏はお尻が3㎝も大きくなりました(笑)」