レアルは「勝利」と「スタイル」のどちらを優先する？

　このようなやり取りは、ある事実を示唆する。それは現在、モウリーニョが2正面作戦に携わっているということだ。

　1人目の敵はレアルという組織そのものだ。

　なりふり構わぬ戦い方をして栄冠を手に入れることと、無冠の状態が続いても自分たちのスタイルや美意識を貫くこと。この2つのうち、レアルはいずれをよしとするのか。ファンは前者を選んだわけだが、ちなみにコパ・デル・レイに勝利した後は、なんとディ・ステファノまでもが手のひら返しで称えるようになった。

「モウリーニョにはこれから何年も（レアルに）とどまってほしい」

　2人目の敵は、言うまでもなくバルサである。

　ピッチ上での戦いもさりながら、モウリーニョはバルサ（グアルディオラ）に対してもかつてない心理戦をしかけた。そして自らが用意した戦いの土俵に乗せることに成功している。超然とした態度を貫いてきたグアルディオラは、CLの準決勝を前に、ついに舌戦に応じてしまったからだ。

もしバルサに完敗したら……モウリーニョの出処進退問題。

　CL準決勝のファーストレグは、バルサがアウェーで勝利した。しかもスコアは2－0である。是が非でも攻めなければならなくなったモウリーニョが、セカンドレグでいかなる策を講じるのかは相当に興味深い。

　と同時に注目されるのは、レアルそのものを相手にしたモウリーニョの戦いの行方だ。バルサに及ばなかった場合、レアルはモウリーニョ流のアプローチにはやはり限界があると判断するのか。あるいは逆にモウリーニョにさらに信を深め、彼の青写真に沿ったチーム作りを進めていくのだろうか。

　バルサが「クラブ以上の存在」だと自任するように、モウリーニョは一監督以上の存在になりつつある。ピッチ外における「文化闘争」も含めて、クラシコ4連戦の掉尾を飾るCL準決勝のセカンドレグを見守りたいと思う。