Jリーグ観察記BACK NUMBER
「後ろに逃げない」ザックの哲学で、
Jリーグの新トレンドはこうなる!
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAtsushi Kondo
posted2011/04/21 10:30
アジアカップの練習中、ジュビロ磐田の前田遼一に指導をするザッケローニ監督。7月の南米選手権での成功は、Jリーグ側の協力にもかかっている
世界のどこのリーグにも、トレンドがある。
たとえば、最近のブンデスリーガであれば、クロップ監督率いるドルトムントがテクニックのある若手をどんどん走らせて成功し、「うまいやつが走る」ダイナミカルなパスサッカーが流行しつつある。
スペインでは言うまでもなく、どんな狭いエリアだろうがパスをつなぐバルセロナの影響が強い。
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Jリーグにもトレンドがあり、過去には日本代表がその発信源になることが多く見られた。
特にイビチャ・オシム監督が日本代表を率いていたとき、「走るサッカー」がキーワードになり、Jリーグでも運動量を重視するチームが増えたように思う。
昨年8月、イタリア人のアルベルト・ザッケローニが代表監督に就任して以来、日本代表のサッカーは明らかに変わった。守備重視の岡田武史監督時代からはもちろん、オシム監督時代とも違ったサッカーを見せている。きっと今後、このザック流哲学がJリーグにポジティブな影響を及ぼしていくに違いない。
では、どんなところが、ザック流によって変わりうるだろう? 今回は2つのポイントに注目してみたい。
サイドチェンジをしても前に仕掛けなければ意味がない。
1つ目は「サイドチェンジ後に前に行く意識」だ。
ザッケローニ監督は中盤の選手たちに、常にサイドチェンジを意識するように指示している。サイドチェンジが成功すれば、相手の守備ブロックを揺さぶることができるからだ。ボランチの細貝萌は「右からパスをもらったら左にさばくというように、『逆サイドにボールをさばけ』とアドバイスされました」と語る。
攻撃のときにピッチを横に広く使いたいザッケローニ監督にとって、サイドチェンジは欠かせない武器だ。
ただし、ザッケローニ監督は代表を実際に率いると、すぐにあることに気がついた。
日本人選手はせっかくサイドチェンジをしても、なかなか前に仕掛けようとしない……と。岡田監督時代、サイドにボールを運んでも、すぐに後ろに戻ってきてしまい、攻撃が渋滞するシーンがたびたび見られた。これでは攻撃が速くなるはずがない。