Jリーグ観察記BACK NUMBER
真夏の過密日程を抱えるJリーグ。
ザック流サッカーで省エネプレーを!
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2011/05/01 08:00
今季のJリーグでは、7月や8月に中2日、3日で試合があることも多い。その過密日程の解消を目的に、田嶋幸三サッカー協会副会長を中心とした日程改革のプロジェクトチームも組織された。
日本代表のザッケローニ監督の「後ろに逃げない」という哲学が、Jリーグの攻撃にポジティブな影響を与えるのではないかとこれまで主張してきた。
ただ、期待されるザック効果は、もちろんそれだけではない。
「運動量に頼りすぎない」という点においても、Jリーグのサッカーに大きな影響を与えるのではないかと筆者は考えている。
今、Jリーグに限らず、世界のサッカー界では「走行距離」がとても重視されている。たとえばドルトムントのクロップ監督は、選手に90分間走り続けることを求めて、チームの強化に成功した。
クロップ監督は選手の走力を維持するためには「休養」が最も大切だと考え、ドルトムントは今季の開幕前、夏のオフを一番長くとったチームだった。普段の練習も、コンディション調整を最優先している。
ここ数年、Jリーグでもイビチャ・オシム元日本代表監督の影響もあって、「走るサッカー」がキーワードのひとつになった。
ただし、ザッケローニ監督は少し異なる考えを持っている。
このイタリア人監督は、これまで日本代表の選手たちに「運動量を増やせ」という要求をほとんどしていないのだ。
体の向きや立ち位置を適切に変えていけば、闇雲に走る必要は無い。
すでに新聞などで度々報じられているように、ザッケローニ監督は守備における選手の体の向きを細かく指示している。
たとえば、相手にサイドチェンジのパスを通されてしまうと、ポジションを大きく修正しなければいけなくなるので、ザッケローニ監督は「サイドチェンジをさせるな」と口酸っぱく要求。相手をサイドに追い込むために、体の向きや立ち位置を状況に応じて変化させるように伝えている。
つまり、体の向きや立ち位置を適切に変えれば、闇雲に走る必要はないとザッケローニ監督は考えているということだ。
アジアカップである選手がふくらはぎを傷めたとき、ザッケローニ監督は冗談交じりに「プレスに行く距離が長いからだよ」と言ったそうだ。