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波瀾含みの開幕と連覇の可能性。
~MLB、今季の覇者を占う~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2011/04/11 10:30
昨季16勝を挙げ3年連続奪三振王に輝いたリンスカムの働きが、ジャイアンツ連覇の鍵を握る
4枚看板“H2OL”をそろえるフィリーズが連覇を阻む!?
ジャイアンツ最大の難敵は、ナ・リーグ東地区に属するフィリーズの存在だろう。いうまでもないが、今季のフィリーズは先発4枚看板をそろえている。R・ハラデイ、C・リー、R・オズウォルト、C・ハメルズ。略してH2OL。もし彼らがそろって200イニングス以上を投げ、15勝以上を稼いだとしたら(可能性はかなり高い)、2003年のヤンキース(R・クレメンス、M・ムッシーナ、A・ペティット、D・ウェルズ)以来の快挙となる。
だが、ジャイアンツの先発陣も充実している。T・リンスカム、M・ケイン、J・サンチェス、M・バムガーナー。フィリーズに比べるとやや小粒だが、勝負強さではヒケを取らない。B・ポージーを中心とする打線も、相変わらずしぶとく、どこからでも点が取れる。もうひとつ、'03年のヤンキースが、4枚看板を擁しながらワールドシリーズでマーリンズに敗れ去った事実は忘れないでおきたい。
開幕5連敗を喫したレッドソックスだが戦力はア・リーグ随一。
注目すべき球団はほかにもある。筆頭はレッドソックスだ。松坂大輔やJ・ラッキーが故障に苦しめられなければ、今季のレッドソックスは相当に強い。C・クロフォードやA・ゴンザレスといった新戦力からも眼が離せないし、ア・リーグではこのチームの戦力が一番高いのではないか。
他に穴馬を挙げるとしたら、ブルワーズとオリオールズとドジャースだろうか。
ブルワーズは、Z・グリンキーとS・マーカムの加入で先発陣が一気に分厚くなった。
オリオールズは10年8月、B・ショウォルターが新監督に就任してからの勝率が6割近い。A・ジョーンズやM・ウィーターズといった若手が伸びれば大化けするかもしれない。
ドジャースは、去年の不振で評価が落ちているだけに今季が面白い。C・カーショーやC・ビリングズリーが好投するようだと、思わぬ穴を開ける可能性も出てくる。
そんなドジャースを率いる新監督D・マッティングリーの采配も、私には興味深い。彼とK・ギブソン(ダイヤモンドバックスの新監督)は、どちらも1980年代のリーグMVPに輝いた名選手だった。そんなふたりが、二十数年後のいま、監督として同地区で対決する。
光陰矢のごとし。
大リーグには、時の流れを感じさせる場面がやはりよく似合う。