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チームの中心となった小久保が巨人を再生する。
text by
永谷脩Osamu Nagatani
photograph byHideki Sugiyama
posted2004/12/02 00:00
ダイエーの王貞治監督が、自ら作り上げたチームを引き継がせる最有力候補にしていたのが巨人に移籍した小久保裕紀だった。だから本人から電話で無償トレードの話を聞いた時は絶句したという。「お前ならばどこに行ってもキチンとやれる」と励ましたが、それも数分の沈黙の後だった。トレード発表後、ダイエーのキャンプに挨拶に来た小久保に、王監督は「巨人の色に染まるなよ。お前はガムシャラにやればいい」と言葉を贈っている。
巨人に入って、小久保が一番気にしたのはベンチでどこに座るかということだった。同期の仁志敏久に相談したりもした。そんな気配りに、堀内恒夫監督は「お前の姿は誰もがわかっているから、遠慮なくやってくれよ」と声をかけた。開幕前には、小久保の野球への取り組み、王監督譲りの自己犠牲の精神は巨人でも認められるようになっていた。今オフ、堀内監督が清原和博の放出を認める発言をしている裏には、これからは小久保にチームを引っ張って欲しいという思いもあるように見える。巨人入りの際、小久保は青学で弟の幸治と同級生だった関係から清原に最初に挨拶に行っている。それだけに、なんとも皮肉なめぐり合わせだ。しかし、小久保の野球に対する真摯な態度がチームに好影響をあたえているのは確か。高橋由伸も足の故障を抱えてプレーするのを見て「小久保さんの姿に感じるものがあった」といっていた。ケガの状態も「キャンプの時には不安だった足も、シーズン中は何とかごまかしながら動けるようになった。このオフに主治医に大丈夫といわれて、ホッとした」というように、上向いてきている。ベテランながら秋季キャンプにも参加。その姿勢に「中心選手が先頭に立ってこそ、本当に強いチームができる」と、堀内監督は感激したという。「ケガしないキャンプ」と評されていた巨人のキャンプが、小久保の存在によって、変わってきている。