メディアウオッチングBACK NUMBER
悪のヒーロー的な代理人を
主人公にした意欲作。
~本城雅人著『オールマイティ』~
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2011/04/02 08:00
『オールマイティ』 本城雅人 文藝春秋 1714円+税
20年間の記者生活が可能にしたリアリティのある記述。
元々、とても興味がある分野だった。
「新聞記者時代、社内留学でアメリカに行かせてもらったときに、ニューヨーク大学でジル・パゴヴィッチという代理人の授業を受けたんです。日本ではそれまで団野村氏くらいしかいなかったのが、ちょうど佐々木主浩、イチローらがアメリカの代理人によってメジャー入りするようになった時期でした」
この作品には、ほかにもマネージメント会社の女社長、フリーのスポーツカメラマン、元ラグビー選手である新聞記者など、個性ある人々が登場する。
また、ストーリーの重要なアイテムになる部分なので詳しくは書けないが、マウンドを降りるときのピッチャーの様子、あるいは、ラグビーで相手チームに勝つためにそこまでやるのかという作戦など、リアリティのある記述が、さらに中身を厚くし、盛り上げている。
「記者をやっていて面白かったのは、こういう考えを持つ人、実際に実行した人がいたことを、取材を通して知れたことです。こうしたエピソードを小説という形で、読者に伝えることができないか……自分は20年間記者をやり、多くの人たちを取材し、選手ならこう、監督ならこう、代理人ならこう考える、こう動くといったことを学びました。彼らの行動心理を小説の骨格にしたかったんです」
シリーズ化も考えているこの作品。野球や競馬など、デビューからスポーツをテーマに執筆してきた著者のひとつの到達点と言えるかもしれない。
文藝春秋BOOKS
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