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大穴ナポリがミランとインテルを猛追。
サッカー界の『シンデレラ』になる?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2011/03/26 08:02
現在、得点ランキングでディナターレに次ぐ2位につけるカバーニ。カリアリ戦で2ゴールを決め、クラブ歴代年間ゴール記録(22点)に並んだ
天王山のミラン戦に完敗し、夢のスクデットが……。
適材適所に選手を配役し、彼らのパフォーマンスを最後まで信頼するマッツァーリの采配は、ドラマチックな試合展開につながる。
「マッツァーリゾーン」と呼ばれる後半ラスト15分には決勝点が次々に生まれ、ホーム「サン・パオロ」の観客を熱狂させた。
27節の大一番ミラン戦を控えた指揮官は「ナポリに何らかのご褒美があってもいいはずだ。われわれは、ある重要な何かのために戦っている」と決意表明。ともにスクデットを争うミラノの2強に対して、一歩も引かない姿勢をあらわにした。
だが、勝てば同点首位のはずだった天王山で0対3と完敗。直前のELビジャレアル戦でメンバーを落とし、背水の陣で臨んだ敵地での一戦だったが、ラベッシの出場停止と首位争いの経験不足が響いた。精神的ダメージは大きく、続くブレシア戦でも無得点ドロー。ミランとの勝ち点差は8にまで開き、春を前にナポリの夢は散ったかと思われた。
「俺たちは往生際が悪い」と主将カンナバーロは夢を捨てず。
上映時間の残りはもうわずか。ところが、主将カンナバーロとナポリの選手たちは「俺たちは往生際が悪い。まだ夢をあきらめない」と声を揃え、最後までシナリオを書き直そうとしている。
29節、ミラノ勢が降格圏チーム相手にダブル・ドローに終わると、同節パルマ戦で復帰したラベッシが1ゴール1アシストを決め、助演男優賞どころか主役級の活躍ぶり。さらに続く30節でも、カバーニの2得点で難敵カリアリを下し連勝。FWイブラヒモビッチが出場停止中とはいえ、パレルモ相手によもやの敗戦を喫したミランとの差を一気に詰めた。ミラノ勢の背中はもう目の前だ。
ザッケローニ日本代表監督も2月に一時帰国した際、「ナポリは要注意だ。彼らはいち早くレース態勢に入っていて、準備ができている」と語り、再びの混沌を予見していた。