近年、日本のスポーツ界で活躍するフィンランド人指導者が増えている。ウィンタースポーツに限らず、バレーボールやバスケットボールなどのトップリーグで存在感を示しているが、彼らはなぜ日本で指揮を執ることを選び、日本のスポーツ界をどう見ているのか。
フィンランド流のコーチングの秘訣、哲学、文化を深掘りするために、3人の指導者を招いたトークセミナーがフィンランド大使館で開催された。その完全版を公開する。
11月17日に、フィンランド大使館の大広間でトークセミナーが開催された。テーマは「フィンランド流コーチ術の秘密」。これぞノルディックスタイルという温かみのある空間に登壇したのは、日本で活躍するバスケット―ボール、バレーボール、アイスホッケーの現役指導者3名だ。
- Bリーグ横浜ビー・コルセアーズ:ラッシ・トゥオビHC
- SVリーグ東京グレートベアーズ:カスパー・ヴオリネン監督
- H.C.栃木日光アイスバックス:イェスパー・ヤロネンアシスタントコーチ
さらに、フィンランドを含む海外でのプレー経験が豊富で、今季から東京グレートベアーズのコミュニケーションマネージャーを務めている野瀬将平氏も参加。スポーツジャーナリスト生島淳氏をモデレーターにテンポよくトークは進んだ。
「非常に勤勉で努力を惜しまないのは想定内でしたが、スキルレベルの高さには驚きました。フィンランドと比べてもセカンドリーグに相当するレベルだと思います」

ヤロネンコーチがアイスホッケーの日本の選手の印象を語れば、ヴオリネン監督も日本のコミットメントや努力レベルの高さを評価した。
「通常、コーチは選手に対して『もう少し練習しろ』と言わなければいけませんが、日本ではむしろ不必要な練習をやめさせたり、もっと効率的に練習するよう言うことが多い」
一方で、細かいことにこだわり、学校の先輩後輩をはじめとした年功序列やステータスを重視する傾向が根強いなど、課題点も指摘した。
「マニュアルを渡して細かく言うのではなく、大枠を提示し、とにかく選手に『自由にやれ』と言っています。これはコーチングにおけるパラダイムシフトだと思います」

個々としてもチームとしても自由に考えて動くことを促す。
トゥオビ監督がチームに最初に伝えたのは、「これからは、あなたたちから答えを求めますよ」ということだった。フィンランドでは選手やチームが双方向のコミュニケーションをするが、日本はコーチの指示を待つ。しかし、ゲームを作るうえでもチームを作るうえでも、決断する時に「対話」は欠かせない。トゥオビ監督が例をあげる。
「もう一回聞いた方がいいのでは? という場面でもコーチの前では言わないので、選手を少人数のグループに分け、ワークする。選手同士が話し合える場を作ることで、皆の前では言いにくいことも発言できるようになる」

3人が課題にあげるコミュニケーションの取り方だが、彼らの発言の先には、「楽しさがあってこそ」の精神がありそうだ。
フィンランドでプレーした経験のある野瀬氏が、当時を振り返る。
「バレーボールなのにウォーミングアップでサッカーをやるんですよ。で、めっちゃ蹴るんです。しかも勝ち負けにこだわって全力でやる。楽しみながら新しい技にも挑戦する。ラリーとラリーの間には『お腹空いたわ』とか普通の会話もするし、その中で『今のちょっとこうだったわ』みたいな話を笑いながらして、そのままチーム内のコミュニケーションにもなっている」
スポーツを楽しむという価値観がフィンランドと日本ではかなり違うだけでなく、それがチームビルディングに直結することを身をもって経験したという。
トークでは3人の現在に至るまでの活動をはじめ、
- 日本人とフィンランド人の相違点
- チームスポーツに大切なこと
- 日本のファンで驚いたのは……
- フィンランドでの楽しみ方
- コーヒー消費量世界一の実態
など、ライフスタイルに関わるトピックや、セミナーに参加したスポーツ関係のジャーナリスト、教育者たちからの質疑応答も。1時間超のトークイベント。ぜひお楽しみください。
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ラッシ・トゥオビ
横浜ビー・コルセアーズヘッドコーチ(2024年~)。フィンランド代表チームのヘッドコーチとしてFIBAユーロバスケット2025では史上初のベスト4進出に導く。
カスパー・ヴオリネン
東京グレートベアーズ監督(2023年~)。20年、ウルフドッグス名古屋のコーチに就任。21年、フィンランド女子代表コーチを経て韓国・仁川大韓航空ジャンボスのコーチ就任。
イェスパー・ヤロネン
日光アイスバックスアシスタントコーチ。2015年からフィンランド国内で指導者としてアシスタントコーチ・ヘッドコーチなどを歴任。父のユッカは元フィンランド代表監督。
野瀬将平
東京グレートベアーズコミュニケーションマネージャー。2015年、FC東京(現・ 東京グレートベアーズ)入団。20年はイスラエル、21年はフィンランドのリーグに移籍。22年より東京グレートベアーズのコミュニケーションマネージャーを兼任。23年からドイツにレンタル移籍、25年3月現役引退。
生島淳
スポーツジャーナリスト。NBAやMLBなど海外ものから、国内のラグビー、駅伝、野球など、全ジャンルでスポーツを追う。
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