#947
巻頭特集

記事を
ブックマークする

「金メダルは私が刻んできた時間」オランダ修行、古武術…小平奈緒が歩んだスピードスケート“女王”までの道のり《平昌五輪ハイライト/2018年》

2026/02/03
ソチ五輪後、驚異的な進化を遂げた最速女王は、圧倒的な強さを見せつけ、悲願の金メダルに輝いた。探究心を持ち理想の滑りを追求してきたスケート人生。揺るがぬ信念が彼女を快挙達成へと導いたのだった。(初出:Number947号 [最速女王が歩んだ道のり]小平奈緒「金メダルは私が刻んできた時間」)

 満員に埋め尽くされたスタンドに、日の丸が揺れていた。2月18日、江陵オーバル。最速スプリンターの座を競うスピードスケート女子500mで、小平奈緒は全神経を研ぎ澄ましてスタートラインに向かった。1本の滑りにすべてを懸けていた。

 静寂。そして号砲。

「スタートではできるだけ氷に傷のない位置を取った。そこが決まればあとは身体が反応すると思っていました」

 しかし、わずかに身体が動いてしまった。小平自身も「ミスったと思った」と認めている。だが、フライングを示す旗はあがらない。身体が流れた状態でのスタートになってしまったことで完璧なダッシュにはならなかったが、小平は冷静だった。同走のカロリナ・エルバノバ(チェコ)をすぐにとらえ、100mを10秒26で入った。

 最初の小さなカーブで遠心力を加速につなげると、あとは鍛え上げてきたフィジカルのパワーを氷に100%伝えるだけだった。五輪レコードを塗り替える36秒94でゴール。低地リンクの常識を打ち破る記録にスタンドがどよめいた。屋外リンクで行なわれた1992年アルベールビル五輪男子500mの覇者、ウーベ・イェンス・マイの37秒14を上回る衝撃的なタイムだった。

 しかし、まだレースは終わっていない。すぐ後の組には五輪2連覇中で世界記録保持者である李相花(韓国)がいた。小平は唇に人差し指を当て、観客に静寂を促した。地元の期待を一身に背負っていた李は得意のロケットスタートが決まって100mをこの日最速の10秒20で入った。けれども、後半の粘りで小平に及ばなかった。

特製トートバッグ付き!

「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Ryosuke Menju/JMPA

0

0

0

この連載の記事を読む

もっと見る
関連
記事