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【動画】「箱根駅伝優勝よりも大切なものがある」玉城良二が語る“なんで俺が?”から始まった監督就任とある風潮への違和感「指導者が選手以上に前に出て…」《徹底解剖・日本体育大学2025①》

2025/10/14
常に「学生主体」の指導を貫く日体大・玉城良二監督。教育の使命と向き合い続けている
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 箱根駅伝に挑む指揮官を動画でインタビューする連載「駅伝監督」に日本体育大学・玉城良二監督が登場。77大会連続出場を誇る伝統校を率いて6年目、「学生主体」の指導でチームを築いてきた。キャプテン選出から駅伝の区間配置までをも学生に委ね、「これは僕のチームではなくて、学生のチームですから」と言い切る。かつては“俺についてこい”型の指導者だった男が、武者修行を経て「見守り型」にたどり着いた背景、教育者としての理念と覚悟、そして日体大監督就任を決めた本当の理由を、44分間じっくり語ってもらった。
 NumberPREMIERでは今季の日本体育大学を徹底解剖。近日中に、田島駿介(4年)、平島龍斗(4年)の動画インタビューも公開する。

「多くの方から支援をいただき、大学からも特別に強化させていただいている以上、箱根駅伝の優勝は目指すべきことなんでしょう。でも、もっと大切なのは、彼らの4年間の学生生活、そしてその後の50年以上にわたる人生です。その長い人生をきちっと歩んでいくためのことをこの最後の教育機関である大学でやってやらなければ、彼らの一生を台無しにしてしまうことになる」

 「箱根でそろそろシードをという気持ちは?」という問いに玉城良二監督はこう話し始めた。

「箱根駅伝で優勝したとしても走れるのは10人、しかし部員は60人、70人といます。全員が1年間チームで取り組んだことを、その後の人生に生かせるようにすることが教育の使命だと思っています。箱根で優勝を目指すことがだめなのではなく、肝心なことをしないで結果にとらわれることは、絶対あるべきじゃないと思っています」

 日本中の注目を集め、絶大な広告効果を生む国民的イベントと言っても過言ではない箱根駅伝を前にして、「優勝よりも大切なものがある」と言い切る。優勝だ、表彰台だ、シード権だと、指導者も結果に追われる学生駅伝界で、この姿勢を貫くことは並大抵の覚悟でできることではない。

photograph by Yuki Suenaga
photograph by Yuki Suenaga

 話す言葉の端々に教育者としての顔が自然にのぞく。それもそのはず、玉城は長野県の公立高校で36年間教員を務め、女子駅伝チームを指導してきた経験を持つ。諏訪実業、長野東で合計23度、チームを全国高校駅伝出場に導き、長野東では2017年、18年と2度準優勝に導いた。女子駅伝界の名将だ。

 その玉城が男子大学駅伝界に来たのは2020年7月のこと。「箱根駅伝の連続出場が続くチームで、卒業生にはオリンピック選手もいるし、名選手がたくさんいらっしゃる。その中で、“なんで俺が?”と。正直何度もお断りをしました」と言う。自分に役割がまわってきたことに「非常事態だったということなんでしょう」と追想した。

 非常事態——。当時、日体大の指導体制は混迷が続いていた。2018年に渡辺正昭元監督がパワハラ問題で解任されたあと、棒高跳びが専門の小林史明氏が駅伝監督、渡辺公二総監督という体制になったかと思うと、翌19年には横山順一部長が兼任するかたちで監督に就いた。そして2020年、火中の栗を拾うようにその役を引き受けたのが玉城だった。動画では経緯と、引き受けることを決断した本当の理由を語っている。

菅平合宿での田島(左)と平島。チームの主軸となる4年生だ
菅平合宿での田島(左)と平島。チームの主軸となる4年生だ

 玉城は大学でも「教育者としての顔」を前面に出して指導にあたっている。日体大は何事も「学生主体」。キャプテンや副キャプテン、主務といった役職の選出も報告事項に過ぎず、監督が口を挟むことはない。箱根駅伝の区間配置すら学生に決めさせているという。

 監督のカラーがチームの特色になることの多い大学駅伝界だが、玉城にとって「学生主体」は特別な考え方ではない。

「昔は学生が主体でチームを運営するのが当たり前でした。今でこそ“○○大学は○○監督”と、指導者の名前が選手以上に前に出てくることもありますが、かつては違った。大学の先生が形式的に監督という立場にいても、実際に動かすのは学生。監督は後からついていって『先生どうぞ』とお膳立てをされていた。だから、学生主体であるのは当たり前なんです」

 ただし、この哲学は最初から揺るがぬものではなかったと言う。

 「僕自身も高校の教員になった頃、若気の至り的に『俺についてこい』っていう時期がありました。でも、それだと結果が出なかった。先導型で『さぁいくぞ! 都大路目指して頑張るぞ!』って言って、気がついたら後ろに誰もついてきていない。それじゃ先導にもならないですよね」と当時のことを語る。

 結果がついてこなければ、何かを変えなければいけない——。

 そこで、当時20代だった玉城は全国の指導者を訪ね歩き、強いチームの指導者は何をしているのかと、指導者としての指導を乞うた。合同合宿などを通じて、いわば“武者修行”を重ねたのだ。西脇工業高校で8度の全国優勝を成し遂げた渡辺公二監督(前出、日体大では駅伝チームの総監督も務めた)、立命館宇治高校の荻野由信監督、上野工業高校の町野英二監督ら名将との出会いが、玉城の意識を大きく変えた。

「先導型から武者修行を経て、見守り型になりました。やってみさせて、後ろから『おいおい、そっちじゃねぇ』と『こっちだぞ』というイメージです」

現在の“見守り型”の指導とは?

 教育者としての想い。その情熱の源とは——。指導哲学が確立されるに至った経緯に迫るほか、インタビュー動画では、以下のことに触れている。

  • 「学生主体」の哲学 箱根駅伝の区間配置も「学生主体」
  • 夏合宿の手応えと今季のチーム
  • “3本柱”の存在感——山崎丞・平島龍斗・田島駿介
  • 目立った下級生の成長と台頭
  • 箱根優勝よりも大切なのは「その後の50年」
  • 下宿生活で生活力を鍛える——長野東高校女子駅伝での指導
  • 「俺についてこい」先導型だった過去
  • 現在の“見守り型”の指導とは
  • 渡辺正昭元監督への複雑な想い

 現在箱根駅伝77大会連続出場という重圧を前にしても、「学生主体」の姿勢を貫く玉城監督。言葉に教育者としての覚悟が滲むインタビュー、ぜひご覧ください。(9月8日取材)

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