場所、体格も出世街道も対照的な2人の大学相撲出身力士が、共に新十両として土俵に上がる。
暴行死事件を乗り越えた苦労人、双大竜。
まずは、先場所西幕下筆頭で6勝1敗、文句なしの昇進を決めた双大竜(そうたいりゅう)27歳。179cm、114kgの細身で筋肉質。押しに徹し、厳しい立合い、素早い動きの中から勝機を見いだす嗅覚は一級品である。
双大竜は東京農業大学出身で、大学4年生の春に腹膜炎を患い、1年を棒に振った。その無念さを晴らそうと飛び込んだ時津風部屋では、順調に幕下まで番付を上げるも、しばらくは低迷が続いた。2年前には部屋で暴行死事件が発生。弟弟子を失い、高校・大学の先輩らが逮捕されたショックで、一時は引退の危機にも瀕した。しかし、事件で有罪判決を受けた後輩からの「自分の分もがんばって関取になって欲しい」との言葉に、双大竜は失いかけていた土俵への情熱を取り戻した。昨年9月場所から6場所連続勝ち越しで掴んだ関取の切符。事件後、部屋の力士たちは次々としこ名を改名したが、「いいときも悪いときもこのしこ名だった。偉大な横綱(双葉山)の1文字をもらったと思えばいい」と、改名せずに新十両の土俵に立つことにした。苦労を乗り越えた男の逞しさを存分に発揮して欲しい。
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photograph by KYODO