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「ポジティブなんですよ」内田順三が明かす新井貴浩“最大の強み”とドラ1・平川蓮にカープが見出す未来とは「4番を打てるような選手に」《広島カープ連載「鼓動」最終回》

2025/12/03
また勝てる集団へと変貌できるのか。再生のカギを握るドラフト会議で見せた笑顔の真意とは――。(原題:[鼓動 新井貴浩と広島カープの2025年]最終回 夜明け前の第一歩)

 ペナントレースが終わって秋になると、球界 では背広姿での静かな戦いが繰り広げられる。ドラフト会議である。10月23日、会場となった東京港区のグランドプリンスホテル新高輪の広間は、グラウンド上とは異なる緊迫感に満ちていた。

 現代プロ野球における各球団の強化はドラフト戦略に大きな比重が置かれている。国内スター選手のアメリカ大リーグへの移籍が常態化し、メジャーのロースター(公式戦出場選手登録枠)拡大と円安によって、有力な外国人選手の確保も以前より難しくなった今、フリーエージェントや海外からの補強よりも、いかに有望な新人を獲得し、育てるかが球団の未来を左右する。

「第1回選択希望選手、広島東洋、立石正広――」

Yuki Suenaga
Yuki Suenaga

 午後5時過ぎ、会場にアナウンスが響いた。同時にテレビの中継カメラがカープの指揮官、新井貴浩の表情を捉える。入札方式の1位指名を巡っては毎年、水面下で各球団の情報戦と駆け引きが繰り広げられるが、今年のカープはどの球団よりも早く、アマチュアナンバーワン打者の1位指名を公表した。競合を覚悟してでも欲しい逸材を獲りにいく決心と、守れども守れどもホームベースが遠いという弱点解消に対する切実さが表れていた。

 今ドラフトの目玉である立石には、予想通り複数球団の指名が重なった。全ての球団の入札が読み上げられると、会場中央の壇上に半透明の箱が用意された。入団交渉権を巡る抽選が行われるのだ。壇上に立ったのはカープの新井と、北海道日本ハムファイターズの新庄剛志と、そしてセントラル・リーグ王者として圧倒的な力を見せつけた阪神タイガースの藤川球児という3人の指揮官だった。日本野球機構のスタッフによって、箱に3つの封筒が入れられる。たった一つの当たりくじを巡って、技術でも戦術でもない、勝負運の試される戦いが始まった。

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photograph by Yuki Suenaga

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