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「来年以降もこの苦しみは続いていく」シーズン最終戦での新井貴浩の言葉を菊池涼介はどう受け取ったのか「一生懸命走らなければ、何も起こらない」《広島カープ連載「鼓動」第12回》

2025/10/27
今シーズンは借金20の5位に終わった。試合後、敗軍の将が語った言葉にファンは、チームは何を思うのか。(原題:[鼓動 新井貴浩と広島カープの2025年]第12回 苦しみの先に――)

 菊池涼介は黄金時代を肌で知っている。当時の主力トリオの頭文字を取った「タナキクマル」や「カープ女子」という流行語が生まれ、広島カープがいつも順位表の一番上を占めていたあの頃のことで、とりわけ印象に残っているうちのひとつが、三連覇の幕開けとなる2016年シーズン半ばのロッカールームの空気だという。首位を独走している時期だった。

「いつからだったか、たしか7月くらいから、新井さんが『気い抜いたらいかん』『気い抜いたらいかん』ってずっと言ってたんです。まだ僕も二十代半ばで若かったんで、何言ってんだろうなって。確かに過去には(最大11.5ゲーム差を逆転されて優勝を逃した)メークドラマとかありましたけど、何をそんなに心配してるのかなって、明日も当たり前に勝つでしょぐらいのノリでいたんです」

 野手陣のリーダーである新井貴浩が警鐘を鳴らし続けるのを不思議に思っていた。当時は怖いもの知らずの若者で、25年ぶりに開こうとしているリーグ優勝への扉の重さなど微塵も感じていなかった。だがカープは盛夏になると後続に追い上げられた。新井の言葉通り、ゴールテープは苦しみを乗り越えた先にあった。菊池は初めて、プロの勝負がいかに峻険なものの上に成り立っているのかを知った。

 そして、もうひとつ忘れられないのが、四十路を前にした新井が一塁へと走る姿である。

「あんまり足が速い人ではなかったので、見ている人には伝わりにくかったかもしれないんですけど、どんな打球でも、いつも全力で走ってました。走っておけば、もしかしたら相手がミスするかもしれない。そういう年間一個あるかないかの場面のために、いつも全力疾走する。実績のある人があんなにがむしゃらに走るのは、すごいなと思って見てました」

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photograph by Hideki Sugiyama

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