2023年3月16日、私はいつもより少しだけ早く家を出た。プラハ6区の自宅アパートを出て車を走らせると、案の定いつもと同じ場所で渋滞に遭遇した。トラムの線路と車道が交差するプラハ城の北側を走る道路は渋滞が起きやすい。プラハ城の城壁に沿ってカーブを描きながら坂を下る地点では鮮やかなプラハの街並みを見下ろすことができる。渋滞の中でも、ふと心が穏やかになるひとときである。
ブルタバ川を越えたところで、車はスムーズに流れ始めた。プラハ市街の石畳の道路に揺られ、私は半ば心を躍らせながらハンドルを握っていた。今日は久しぶりに私の“同僚”が仕事に復帰する日であった。会社に到着し、フロアを見渡すと“同僚”は既に仕事を始めていた。
その同僚とは、チェコ代表のフィリップ・スモラである。スモラは'23年のWBCで、全試合サードとして先発出場を果たした。本業はKPMGに勤める会計監査人であり、私がKPMGプラハ事務所に駐在していた時の同僚であり、親友でもある。
私がスモラとオフィスで顔を合わせた瞬間、彼は俯きがちに照れ笑いを浮かべた。多くを語らずとも通じ合う、そんな表情で互いを迎え合った。私はスモラのWBCでの活躍に称賛の言葉を送った。
「もう有休が残っていないから」と苦笑
チェコ代表は初出場となった'23年のWBCを1勝3敗で終えて1次ラウンド敗退となった。緊張感に包まれ、過酷を極めた東京ドームでの4試合を終えた後、大半のメンバーは仕事に復帰するため、翌日のフライトでチェコへ帰国した。スモラと大谷翔平との交流は日本でも大きなニュースとなり、彼は日本の報道陣に囲まれてインタビューを受けていた。
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