記事を
ブックマークする
【広島カープ】「潜在能力、バネが違います」鈴木誠也、菊池涼介の才能に惚れ込みV3を生んだスカウト陣の“眼力”と“熱意”「動きが機敏で忍者みたいだった」
会議室に静寂が落ちた。資料を見つめていた参加者の視線が一斉に向けられても、当時スカウト3年目の尾形佳紀はためらうことなく言葉を放った。
「絶対に、鈴木誠也がいいと思います」
2012年10月23日。マツダスタジアム内の球団事務所で行われたスカウト会議では、2日後に控えたドラフト会議の最終打ち合わせが行われていた。
同年の補強ポイントのひとつに“高校生のショート”が挙げられていた。数人いた候補の中には、その年の夏の甲子園でPL学園高の清原和博に並ぶ通算29打点を打ち立て、全国に名を馳せたばかりの光星学院高(現・八戸学院光星高)・北條史也(のち阪神)の名もあった。外れ1位候補の評価だった北條に対し、二松学舎大附高・鈴木は3、4位の中位候補に過ぎなかった。ショートとしての能力では明らかに劣っていた。尾形も、その点は認める。ショートとして大成する未来は描けていなかった。高校3年間一度も甲子園に出場しておらず、視察した試合でもほとんど結果を出せていなかった。だが、尾形は鈴木に特別な魅力を感じていた。
「第一印象は走る姿。センスのある、バネのある走り方が印象的でした。見に行った試合ではいつもサードゴロを打っているイメージでしたけど、打球に力強さがあった。練習で見せる、試合では分からないバッティングのスピードやパワーはほかの高校生とは違うなと。能力的にプロで行けるんじゃないかなと感じました」

広島は国内のスカウティングを8人で分担している。担当地区以外のスカウトによる「クロスチェック」は行わない。担当外のチェックが入ると、どうしても欠点にばかり目が向き、一芸に秀でたような尖った才能を逃してしまう。だからこそ、選手の能力判断はすべて担当スカウトに委ねられる。会議では各スカウトが自ら制作した指名候補選手の映像と長所をアピールする「プレゼン力」が、フロントや他地区のスカウトを含めた球団としての評価につながる。そこに、ベテランも若手もない。オーナー自ら担当スカウトに「ほかに誰か、何かないか?」と聞くなど、意見を言いやすい環境にあるのもスカウト陣の意欲を駆り立てる材料となっている。
全ての写真を見る -6枚-プラン紹介
「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
この連載の記事を読む
記事


