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「やばいな、やばい下手やなと」打撃コーチ・朝山東洋が見た“1999年”の新井貴浩と“2025年”の二俣翔一「強い姿を見せない選手は去ってもらう」<鈴木忠平連載「鼓動」第2回>

低気圧が近づいているとテレビの天気予報が告げていた。一見すると春らしい陽気の裏で等圧線は少しずつ変化しているのだという。開幕からひと月が経った4月下旬、広島カープにもそんな兆しが見え隠れしていた。
開幕早々から坂倉将吾と秋山翔吾、新外国人のエレフリス・モンテロと計算していた役者たちを欠いた打線は、若手と新顔の躍動によって一時は打率リーグトップとなり、チームも首位に立ったが、やはり息切れの時期はやってきた。横浜スタジアムに乗り込んだが、金土日の計27イニングでわずか2得点しか奪うことができなかった。
今シーズン初めて黒星が三つ並んだハマスタの夜、ゲームが終わってしばらくすると、ベンチ裏の通用口から選手やスタッフが出てきた。一様に俯き加減で、足取りは重い。スタジアム脇に停めてあるチーム専用バスまで無言の列が続く。

朝山東洋はその中にあって、顔を上げていた。肩書きは一軍打撃コーチ、おそらく野球界で監督の次に野次を浴びる機会の多いポジションである。
「打てば選手で、打てなければコーチだと。それは分かっています。そういう仕事だと思ってやってます」
バッティング部門の数字が軒並み最下位だった昨シーズンから批判に晒されてきた。だからだろうか、打っても打てなくても黒縁眼鏡の奥の眼は浮かれるでも嘆くでもなく、どこか達観の色を帯びている。勝てば弾み、負ければ澱むのが勝負師の常だが、朝山の歩調はいつも一定である。急くでもなく遅れるでもない。
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