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[広島カープ新監督肉迫]新井貴浩「変わらぬ男は、変わるのか」

2023/03/30
監督とは勝負の前には非情でなければならない――。常套句とは真逆の、揺るがない情深さは、歓喜への道標となるのか。広島を愛し、広島に愛された25番。カープの新指揮官の挑戦が始まろうとしている。

 沖縄キャンプの朝、新井貴浩がスタジアムにやってきた。スポーツバッグひとつ左肩に担いで、まるで食堂の暖簾をくぐるかのように球場へ入っていく。“白熊”と呼ばれた巨体も、赤ジャージの背中につけた25番も、カープの4番バッターだった頃と何ひとつ変わっていない──ように見える。新井が指揮官になったことを物語るものといえば、選手用の大型バスではなく、マツダ製セダンの後部座席に乗って登場したことくらいだろうか。

 そんな新井をチーム内から見つめる視線がひとつ。河内貴哉。41歳。カープひと筋でユニホームを脱いだかつてのドラフト1位左腕はいま球団広報となっている。

「監督になられても新井さんは新井さん……ですよね。変わっていない……うん、今のところ、そう見えます」

 現役時代から弟分だった河内によれば、新井の風呂好きは相変わらずで2月の前半を過ごした宮崎日南キャンプでは二軍宿舎のサウナにふらりと現れることも多かったとか。ただ何より以前のままなのは、その多情ぶりなのだという。

「キャンプが始まってからずっと、来てくれたファンの方々全員にサインしているんです。全員にですよ。今年からキャンプ応援ツアーも再開したんですが、当初は記念撮影だけの予定が、やはり新井さんは参加者全員にサインされてました」

 色紙にサインペン。選手の前に列をつくるファン。球春前夜の風物詩ではある。だが、まるまるひと月、求める全員に応じた野球人は古今東西どれだけいるだろうか。

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photograph by Yoshiyuki Hata

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