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「いかにして“浜風”を味方にしたか」田淵幸一、掛布雅之が語る甲子園でホームランを打つということ「バースも僕の打撃を見て…」《レジェンド連続インタビュー》

2025/04/25
左から掛布雅之、田淵幸一
甲子園名物「浜風」はいつの時代も打者泣かせだ。そんな難敵を攻略し、ホームランを量産したのが、田淵幸一と掛布雅之、2人のミスタータイガースだ。186cmの長身で右打ちの田淵、小柄で左打ちの掛布。レジェンドたちは、いかにして風を味方につけたのか。(原題:[ミスタータイガースの真髄]田淵幸一/掛布雅之「アーチを宿命づけられて」)

 身長175cmの割には不釣り合いなほどに大きく、分厚い手だった。

「反対方向に打つには、バットは絶対内側から出さなきゃダメだというのはわかっていたんです。なので、バットのヘッドを遅らせ気味に出してきて、こうボールを捉えるんだけど……」

 掛布雅之は、そう言いながら目の前の水が入った円筒状のグラスに左手の土手の部分を当て、そこから手の平の上を転がすようにしてグラスを横へと移動させていく。

「このままだとスライス回転になって、ファウルになっちゃうじゃないですか。だから、最後の最後、ボールの外側を叩く。バットって硬いけど、しなるんですよ。そのしなりを戻してあげるような感じかな」

 グラスが中指の第1関節にかかったあたりで、掛布はグラスを逆回転させるように4本の指を一気に後ろ側に回した。

「こうして外側に(バットを)巻き付けるようなイメージで打つと、緩いフェードボールになる。僕はライト方向に打つときは風に負けたくないんで、低い打球を打とうとしていた気がします。逆にレフト方向の打球は高く上げていたかもしれない。風にも乗せやすいですから」

 左打席からレフト上空に高く舞い上がった打球が切れずにポール際ぎりぎりに落ちていく。現役時代、掛布が甲子園で何度となく演出した光景である。

掛布は長らく浜風を「まったく意識していなかった」

 掛布に話を聞いたのはナイターが始まる直前、甲子園の近くのホテルの喫茶店だった。取材後、甲子園のバックスクリーンを下から見上げると、上部中央に掲げられた日本国旗はライトからレフト方向に強くはためいていた。天候が荒れ模様だったこともあり、旗はよれることなく、きれいに長方形を維持していた。

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photograph by KYODO / Bungeishunju

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