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「こんなに怒鳴って、選手に嫌われない?」大道泉、“時代おくれのS&Cコーチ”がラグビー界に遺したもの《田村優、ディアンズも証言》

2025/03/12
昨年9月に亡くなった大道泉
あの「ブライトンの奇跡」以降、高校、大学、そしてプロとあらゆるカテゴリーで当たり前と言えるほど広まった「S&C」理論を、'90年代から取り入れた男がいた。ラグビーを愛し、すべてを捧げた無名の指導者が遺した功績と、その生き様に迫る。(原題:[ナンバーノンフィクション]時代おくれのS&Cコーチ)

 エディー・ジョーンズが初めてラグビー日本代表ヘッドコーチに就任した2012年。後の'15年W杯で実現した南アフリカ撃破に向けて重要視したのが、S&C(ストレングス&コンディショニング)の強化だった。S&Cとは強靭な筋肉だけでなく、柔軟性や持久力、しなやかな体づくりを目的としたトレーニングだが、当時の日本で広く浸透しているものではなかった。

 日本初の大会3勝という'15年W杯の結果を受けて、S&Cの重要性は多くの認知を得ることになった。また近年のラグビーは選手の大型化が進み、接触時の衝撃度は上がり、ケガのリスクも増している。その予防という側面でも、今や年代問わず多くのチームがS&Cを取り入れるようになった。

 そのS&Cの指導に、「ブライトンの奇跡」が起きる20年以上も前から心血を注いだ人物がいた。ラグビーにおけるトレーニングの方法論、いわば教科書を全国に広めたパイオニアの一人だ。名は大道泉(おおみちいずみ)という。

流経大柏は花園で喪章をつけてプレー KYODO
流経大柏は花園で喪章をつけてプレー KYODO

 大道は'03年に刊行した著書『勝ちにいく筋力トレーニング』で、S&Cを次の2点に定めた。

(1)競技力に反映する筋力・パワーの養成

(2)ケガに強い軟らかくて強靭な体づくり

 特に(2)は、単純なウェイトトレーニングだけでは得られない。トレーニングの合間にジャンプやマット運動、ストレッチを組み込み、体のキレやバネ、軟らかさを併せ持つことに大道は重きを置いた。

 スポーツの強豪として知られる千葉県・流通経済大学付属柏高校。ラグビー部は全国ベスト16の常連だ。専用のウェイトトレーニングルームに置かれた机には、花束と写真立て、コーヒーが入ったマグカップがあった。監督就任10年目の(あい)亮太は言う。

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photograph by Yuki Suenaga

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