#1115
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【独占インタビュー前編】「いつ解雇されてもおかしくない…」河村勇輝が語る“カット”の厳しさとNBAの充実感「この世界が僕を強くする」

NBAとGリーグを往復する目まぐるしい日々を過ごす彼の表情には充実感が漲っている。本契約という目標へ、最高峰を生き抜く覚悟は一寸たりとも揺らいでいない。「人生最大の挑戦」の場所、メンフィスで話を聞いた。《スペシャルインタビュー前編。後編はこちらからご覧ください》(原題:河村勇輝「この世界が僕を強くする」)

 夜中1時過ぎ、携帯の音で目が覚めたとき、河村勇輝は嫌な予感がしたという。

 翌朝10時からのメンフィス・ハッスルの試合のため、河村は早めに就寝しており、電話が鳴ったときは熟睡中だった。発信元はメンフィス・グリズリーズのアシスタントコーチ。携帯のスクリーンにその名前を見た瞬間、河村は「これはカットされたかもしれない」と覚悟を決めたという。それまで、こんな夜中に電話がかかってきたことはなかったからだ。

 実際には、この時は契約解除の通知ではなく、グリズリーズに故障者が出たので、朝になったら飛行機に乗って遠征先のロサンゼルスに来てほしいという連絡だった。カットされたわけではないとわかって安心したのもつかの間、慌てて遠征に出るための荷づくりをし、少しでも身体を休めるために再び眠りについた。

 朝になって、もう一人のチームメイトと共に飛行機で移動。チャーター機ではなく民間機で、直行便ではなく乗り継ぎ便。しかも飛行機が遅延したため、ロサンゼルスに到着したのは試合開始の約2時間前だった。会場に直行し、急いで準備して、チームミーティングの前にシューティングだけはすることができた。

 しかし、それだけ苦労して合流したのに、河村の出番は負けが決まった最後の1分弱だけ。ほとんど何もできずに試合は終了した。

AFLO
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 この出来事に、グリズリーズの2ウェイ契約選手としての河村の苦労やチャレンジが詰まっている。いつカットされるかわからない緊迫感。チームの都合に合わせてNBAのグリズリーズと、Gリーグのハッスルの間を行き来する日々、突然のスケジュール変更。広いアメリカを飛び回る飛行機移動。時間がないなかで、できる限り準備を整えて、それでも出場機会が与えられないことも、日常茶飯事となっていた。

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photograph by Tetsuo Kashiwada

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